ドラッグヒンジの役割:the purpose of the Lead-lag (Drag) hinge

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ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、ヘリコプター工学の問題です。

 

例題

566. H703 PVT
The purpose of the lead-lag (drag) hinge in a three-bladed, fully articulated helicopter rotor
System is to compensate for
A) Coriolis effect.
B) coning.
C) geometric unbalance.

 

全関節型ローターに装備されているリード・ラグ・ヒンジの役割は何ですかという問題です。

 

fully_articulated_rotor_system
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予備知識

全関節型ローターヘッドシステム(Fully Articulated Rotor System):ローターヘッドに対して、ローターが上下(フラッピング)前後(リードラグ)に動くことが出来る関節(ヒンジ)を設けているもので、3ブレード以上のメインローターを持つヘリコプターに採用されているものがある。(ヒューズ269シリーズなど)

 

Advancing (Retreating) Blade :ヘリコプターが前進飛行中、相対風(Relative Wind)を受ける側(風上側)のローターブレードを、前進側のブレード(Advancing Blade)といい、風下側のローターブレードを後退側のブレード(Retreating Blade)という。ヘリコプターを上から見て左回転のローターシステムでは、進行方向右側に位置するローターブレードがAdvancing Bladeとなる。

 

揚力の不均衡(Dis-symmetry of lift ):ヘリコプターが前進飛行中、相対風を受ける側のローターブレード(Advancing Blade)の揚力が、追い風側のブレード(Retreating Blade)の揚力よりも大きくなり、ローターシステム内で揚力の不均衡が起こる。

 

フラッピング(Flapping ):揚力の不均衡により、前進側のブレードの揚力が後退側のブレードよりも大きくなるため、全関節型ローターシステムではフラッピング・ヒンジを設けて、前進側のブレードを上方向に反らせることにより、揚力の垂直成分を減じ、空力的にバランスをとっている。

 

コリオリ効果(Coriolis Effect ):前進側のローターブレードがフラッピングすると、ローターブレードの見た目の重心がローターマスト(回転軸)方向に移動する。このとき同時に前進側ローターブレードの回転速度を増加させようとする力(コリオリの力)が働く。

 

リード・ラグ・ヒンジ(Lead-Lag Hinge ):全関節式ローターシステムでは、前進側のローターブレードがフラッピングすることにより発生するコリオリの力を逃がすため、ローターブレードを前後方向に動けるようにリード・ラグ・ヒンジを設けている。

 

 

問題の解説

選択肢Aが正解。リード・ラグ・ヒンジは、コリオリの力に対応するために設けられています。
選択肢Bのコーニングとは、遠心力と揚力により回転中の各ローターブレードが上方向に反る現象で、横から回転するローターディスクを見たとき、円錐(コーン)を逆にしたように見えることからきています。選択肢Bは問題のリード・ラグ・ヒンジをフラッピング・ヒンジに置き換えれば正解となります。
選択肢Cの、リード・ラグ・ヒンジの役目は”幾何学的な不均衡を補正するため”というのは誤りです。正しくは、”リード・ラグ・ヒンジが作動した結果、幾何学的な不均衡が生じる”です。

 

まとめ

地上共振は、外部の力がローターシステムに作用して幾何学的な不均衡が発生し振動の原因となりましたが、今回は空力的な不均衡を補正するために、結果としてローターシステムに幾何学的な不均衡が発生しています。空力的に釣り合っているため、これによって振動が発生することはありません。

フラッピング・ヒンジやリード・ラグ・ヒンジが無いと、ローターの付け根に絶えず上下・前後の力が加わり、ローター取り付け部が金属疲労によって破壊してしまいます。

現在のヘリコプターは、ローターシステムに可撓性(ねじっても大丈夫な)素材を使用してヒンジを不要にしたものが主流となっています(Airbus Helicopters AS350など)。
これをリジッドローターシステムといい、構造を簡略化することで、故障の発生を軽減すると同時に地上共振の発生も防止することが出来ます。

また、2枚ブレードのローターシステム(セミ・リジッド・ローターシステム)はティータリング(シーソー)ヒンジを設けることにより、フラッピングに対応しています。構造上、リード・ラグ・ヒンジは不要です。(Bell 206など)

最後に、コリオリの力は、良くフィギュアスケーターのスピン中の動きに例えられます。両手を水平に広げてスピンをしている状態から、選手が両手を上げて頭の上に持っていくと、スピンの速度が増加します。腕の重さが回転軸方向に移動しコリオリの力が働いたため、スピンの回転速度が増加したと説明することが出来ます。

航空気象では、地衡風の説明に地球に作用するコリオリの力が出てきます。調べてみてください。

 

おわり