日中の衝突防止テクニック:Eye movements during daytime collision avoidance


ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、エアロ・メディカル・ファクターに関する問題です。

例題

29.PLT099
Eye movements during daytime collision avoidance scanning should

A) not exceed 10 degrees and view each sector at least 1 second.
B) be 30 degrees and view each sector at least 3 seconds.
C) use peripheral vision by scanning small sectors and utilizing off-center viewing.

日本語訳

29. PLT099aPVT
昼間、衝突防止のための見張りを行うための適切な目の動かし方は次のどれか
A) 10°を超えない範囲の空間をそれぞれ最低1秒間探す
B) 30°の範囲の空間をそれぞれ最低3秒間探す
C) 空間を小さな範囲に分け、中心を避けて見ることにより周辺視野を活用する

解答
A) not exceed 10 degrees and view each sector at least 1 second.

 

解説

日中の見張り方法:

空間を10°を越えない範囲で細かく区切り、それぞれのセクターを1秒間以上焦点を当てて他機を探す。

 

夜間の見張り方法:

空間を細かく区切り、目標物の中心を避けて見ることにより周辺視野を活用する。

 

目の仕組み

目の構造はカメラと一緒で、景色はレンズを通して網膜上で焦点を結び、視細胞がセンサーとなって視神経経由で脳に情報が伝わる。

eye

eye

 

 

網膜の構造

黄斑:水晶体(レンズ)に正対する位置の網膜には黄斑があり、その中心には1mm程度の大きさの中心窩(Fovea) がある。文字を読んだり、物体に焦点を当てて見るときはこの部分を使用する。

錐状体(CONE):視細胞の一種で表面が円錐状をしている。中心窩部分に集中していて物の色や形状をはっきりととらえることが出来る。明るい場所から暗い場所へ移動した場合、適応は速い。

杆状体(ROD):視細胞の一種で表面が棒状をしている。網膜の周辺部にあり明暗を敏感にとらえることが出来る。明るい場所から暗い場所へ移動した場合、適応は遅く約30分必要だが、一旦適応するとその感度はCONEの10,000倍といわれている。

 

視野の種類

night_blind_spot

night_blind_spot

中心視野:物の色や形がはっきりと認識できる。範囲は狭い。(昼間の見張りに有効)

周辺視野:明暗や動きを敏感に感じることが出来る。範囲は広い。(夜間の見張りに有効)

 

夜間の盲点

夜間、RODに比較して感度の低いCONEで物体を直視しようとすると、視界から物体が消失してしまうことがある。

 

 

結論

昼間、見張りを行う時はCONEを活用する。CONEを活用するためには空間を10°以内の狭い範囲に区切り、それぞれに短時間焦点を当てる。
夜間、見張りを行う時はRODを活用する。RODを活用するためには目標を直視するのではなく、5-10°程度ずらした位置で見るようにする。

また、夜間飛行を行う時は事前に目を慣らす必要がある。30分程度はヘッドライトなどの明るいものを直視しないこと。
コクピットの照明には赤色灯を使用することで眩惑を防止することが出来る。