飛行機の失速速度:The Indicated Airspeed at which a given Airplane Stalls

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の失速速度に関する問題です。

例題

7.PLT477 PVT

As altitude increases, the indicated airspeed at which a given airplane stalls in a particular configuration will

A) decrease as the true airspeed decreases.
B) decrease as the true airspeed increases.
C) remain the same regardless of altitude.

 

日本語訳

7.  PLT477c PVT

ある飛行機の、所定の形態における失速時の指示対気速度は、高度が増加するにしたがって、

A) 真対気速度が減少するため減少する
B) 真対気速度が増加するため減少する
C) 高度に関係なく一定である

 

解答

C) 高度に関係なく一定である

 

予備知識

所定の形態(Particular Configuration):飛行機のフラップやランディング・ギアおよび機体重量を予め決めた状態にすること。Clean Configurationは、フラップやランディング・ギアを格納して抵抗を一番小さくした状態、またLanding Configurationは、フラップやランディング・ギアを展開した状態をいう。(Dirty Configuration)

 

指示対気速度(Indicated Air-Speed, IAS):ピトー・スタティック式(動・静圧式)速度計において、計器が指示した値を直接読み取った数値のこと。

 

較正対気速度(Calibrated Air-Speed, CAS):指示対気速度から位置誤差および機械誤差を補正した速度。位置誤差は、ピトー氏管自体の取付角度のずれや航空機の姿勢変化による相対風が動圧孔に正対しないことで発生する。機械誤差は、指針と目盛のずれや伝達ギヤの遊び等、機械部分が原因で発生する。

 

真対気速度(True Air-Speed, TAS):較正対気速度を高度と標準以外の温度で補正した速度。同じ指示対気速度で飛行しても、高度が大きくなるほど、温度が高くなるほど真対気速度は大きくなる。静穏な大気中では実際の対地速度と同じになる。

 

 

解説

飛行機は、どのような速度、姿勢においても失速を起こすことが可能です。一般に、航空機の速度が小さくなると失速を起こすように思われますが、速度と失速には直接的な関係はありません。

失速は、主翼の迎え角がある程度以上になると、『必ず』起こります。一般的な翼型においてその角度は16-20°で、この迎え角を『臨界迎え角』と呼んでいます。

問題にある、『所定の形態』とは、飛行機に装備しているフラップやランディング・ギヤが、格納された状態なのか、展開された状態なのかという飛行形態のことで、例えば着陸形態は、フル・フラップ、ギヤ・ダウンした状態を表します。

上記の着陸形態で水平飛行を行い、パワーをアイドル状態にし、高度が下がらないようにエレベーターを引いていくと、航空機の速度計の指示は、どんどん下がっていき、ある指示対気速度(VS0)になると、航空機は失速します。これは、ある速度まで低下したから失速したのではなく、高度を維持しようとエレベーターを引いていった結果、臨界迎え角に達したので失速したということです。

1-16

1-16

失速を起こした時の対気速度計指示(VS0)は、海面上でも、海抜6,000フィートにある高地の飛行場でも同じ速度です。その理由は、対気速度計の構造にあります。

対気速度計は、ピトー管の動圧とスタティック・ポートの静圧の対比を指針の動きに変えて速度表示するようになっています。海面上に比べ、海抜6,000フィートでは、気圧が低くなるので、ピトー管に入る圧力も低くなります。しかし、同時にスタティック・ポートの静圧も低くなるため、その割合は周辺気圧に関係なく一定です。

従って、ある一定条件下で失速するときの指示対気速度は、高度に関係なく一定であるといえます。ただし当然ながら、条件を変えれば失速時の対気速度は変化します。

最初に書いたように、飛行機はいかなる速度、姿勢においても失速することが可能です。例えば、100ノットで巡航中でも、エレベーターを急激に引いて、臨界迎え角を故意にオーバーさせれば、飛行機は失速してしまいます。(飛行機の構造部が耐えることが出来れば)また、急旋回中、速度が比較的高いのに失速し、スピンに入ってしまうこともあります。これは、急旋回で荷重倍数が増加し、増加分の揚力を作るためエレベーターを引くと、臨界迎え角に達してしまうためです。

まとめ

失速は、迎え角が一定以上になると必ず起こります。高度が変化しても、ピトー管・静圧孔ベースの速度である指示対気速度は変化しません。

 

 

自動方向探知機その2:Automatic Direction Finder

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、ADFに関する問題その2です。

例題

  1. PLT014 PVT

(Refer to figure 30, illustration 2.) Determine the approximate heading to intercept the 180° bearing TO the station.

fig30_02

fig30_02

A)  040°
B)  160°
C)  220°

 

 

 

 

日本語訳

69.  PLT014c PVT

(図 30, イラスト 2.) NDB局へ向かう 磁針方位180°のコースにインターセプト(合流)する場合、航空機はどの針路を維持すればよいか

 

解答

C) 220°

 

解説

はじめに、図30のADF指示器は、アジマス(方位目盛)が可動式のもので、前回の問題の固定式カード(ゼロが真上に固定されているタイプ)ではないので注意してください。可動式目盛は、(SET)ノブを回して、真上の▼印にコンパスの指示を合わせます。(MH315)

すると、ADF指示器の指針が示している数字(190)が局への方位(MB)となるので、公式(MB=RB+MH)で計算しなくてもMBがすぐに判明します。

そのような訳で、図30から航空機の磁針路は、315と仮定します。

 

次に、インターセプトという言葉についてお話しします。
インターセプトは、合流するという意味ですが、これはNDB、あるいはVOR局へ向かうコース(TO the Station)と局から離れていくコース(FROM the Station)に対して航空機が合流するということで、コースに対して合流する角度をインターセプト角といいます。

問題の180(TO)のコースは、局へ向かう磁方位180°という意味なので、航空機は局へ向かうコースにインターセプトするという前提です。

intercepting to 180 TO

intercepting to 180 TO

インターセプトする角度は、コースに対して90°以下でなければなりません。そうでないと、航空機はインターセプトするまでの間、局に対して遠ざかってしまうからです。

180(TO)のコースの場合、インターセプト角の範囲は090°から270°です。
従って、(A)の040°は範囲外なので不正解です。

(B)の160°の場合、180°(TO)のコースに対し20°の角度をもってインターセプトすることになり、問題ありません。

また、(C)の220°の場合も、コースに対し40°のインターセプト角なので、これも問題ありません。

答えは(B)または(C)となりますが、正解は航空機が180(TO)のコースに対して東側にいるか、西側にいるかによって変わってきます。
自機がコースに対して東側にいるときは、(C)の220°、西側にいるときは(B)の160°が正解となります。

そこで、図30の2の計器の指示を読み取り、コースに対しての自機の位置を調べる必要があります。結論から言うと、現在位置からのMB(局への方位)を調べると、コースに対してどちら側にいるかが分かります。

可動式カードの場合は、指針の指示がMBなので、局への磁方位は(MB to the Station)190となります。

MB190ということは、別の言葉でいうと、自機は現在、190(TO)のコース上にいるということです。よって、自機は、180(TO)のコースに対して10°分左側(東側)のコースにいるということになります。

 

ここからは、おまけになりますが、インターセプトする角度が大きいほど、コースに対して素早く合流することが出来ます。従って、自機から局への距離が短い場合にインターセプト角を大きく取りますが、ADF指示器の指針の振れが急になるので(レートが高くなる)オーバーシュートしやすくなり、合流の操作が難しくなります。

逆に、インターセプトする角度が小さくなるほど、合流に時間が掛かりますが、指針の振れが穏やかなので、合流の操作が簡単です。

実際の操作では、初期は60°くらいの角度でインターセプトを行い、コースに近づくにつれ、45°、30°とインターセプト角を減らしていきます。そうすると、とてもスムーズにコースへの合流が可能です。これはVORでインターセプトを行う場合も同様です。

最後に、ADFは局への方位を指針が指してくれるので、VORよりも簡単に使えると思いがちですが、実際は上記の公式を使ってMBを求め、風向を考慮してWCAを考慮した針路を計算するなど、VORに比べて使いにくい計器です。

現在は、NDB局も激減しADFは活用する機会が減ってきています。
学科試験問題も、VOR、RNAV、GPSが多くなってきています。

 

気化器凍結:Carburetor Icing

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航空工学の問題です。

例題

26. PLT136 PVT
With regard to carburetor ice, float-type carburetor systems in comparison to fuel injection systems are generally considered to be

A) more susceptible to icing.
B) equally susceptible to icing.
C) susceptible to icing only when visible moisture is present.

日本語訳

26.  PLT136a PVT

気化器凍結に関して、フロート式キャブレータ装置を燃料噴射装置と比較した場合、一般的に考えられることは、

A) アイシングを起こしやすい
B) 起こりやすさは変わらない
C) 空気中に目に見える水分が存在する場合は起こしやすい

解答

A) アイシングを起こしやすい

解説

レシプロ航空エンジンの燃料供給装置には、従来のキャブレーター(気化器)式とインジェクション(燃料噴射装置)式があります。

大きな違いは燃料を噴射する場所で、キャブレーター式は気化器内部のベンチュリ―付近(図7-10)から負圧で吸引されるのに対し、インジェクション方式では、シリンダーヘッドの吸気ポートに直接噴射が行われています。

7-10

7-10

キャブレーター・アイシング(気化器凍結)は、ベンチュリ―やスロットルバルブ部分が凍結し、混合気がエンジンに供給されにくくなる現象で、エンジンの回転数低下から始まって、振動、パワー低下、エンジン不調、最終的にはエンストにつながるため、操縦席のキャブ・ヒートレバーを引いて排気マニホールドの輻射熱を導入することにより、吸入空気の温度を上げて凍結を防止しています。

キャブレーター・アイシングが発生し易い条件は、

・外気温度70°F(21℃)以下
・相対湿度80%以上

これは、雨や霧などの目に見える水分がある状態でなくても、外気温度が氷点下でなくても発生することを意味します。極端なケースでは、外気温度38°C、相対湿度50パーセントで発生することもあり得ます。

7-11

7-11

気化器内部のベンチュリ―とスロットル・バルブ付近では、ベンチュリ―出口で減圧されたことによる温度低下と、ガソリンが気化するときに熱を奪うことにより、外気温に対して70°F(38°C)低下します。

インジェクション方式(コンチネンタル型)の場合

燃料噴射式の場合は、以下の6つのコンポーネントによって構成されています。

・エンジンによって作動する燃料ポンプ
・燃料/空気コントロール・ユニット
・燃料分配装置
・噴射ノズル
・予備燃料ポンプ(電動)
・燃料圧力/流量指示器

予備燃料ポンプは、エンジン始動前に燃料/空気コントロールユニットに燃圧を掛ける役目をします。

燃料/空気コントロール・ユニットはもともとキャブレーターのあった場所にスロットル・ボディーと呼ばれる空気の流量を制御するスロットル・バルブおよびベンチュリ―を内蔵した装置と、燃料の流量を制御するフューエル・コントロール・ユニットが装備され、操縦席のスロットル・ノブを操作するとスロットル・バルブおよびフューエル・コントロール・ユニットがケーブルやリンクで連動する仕組みになっています。これにより、スロットル開度に応じた空気と燃料の流量を制御することが出来ます。

7-13

7-13

フューエル・コントロール・ユニットで制御された燃料は、燃料分配装置(フューエル・マニホールド・バルブ)を通り、各シリンダーごとに装備された噴射ノズルに供給されます。ノズルは燃料をシリンダーヘッドのインテーク・ポートに噴射し、ここで初めて空気と燃料の混合気が生成されます。

キャブレーター式の場合、エンジン下部にインレット・マニホールドを介して取り付けられたキャブレーター内、つまりエンジンの熱が届きにくく減圧された環境下で混合気がつくられるのに対して、インジェクション式の場合は、エンジン付近の暖かい場所で混合気がつくられるためガソリンの気化が促進されるとともに、気化によるアイシングの発生が抑えられています。インジェクション式、特に過給機を装備したエンジンは気化によるアイシングはほとんど発生することはありません。ただし、空気取り入れ口やスロットル・バルブ付近のアイシングは気象条件によっては発生することがあります。

インジェクション式のメリットは、

気化によるアイシングが発生しにくい
・燃料の流れが良い(配管が加圧されているため)
・スロットルの追従性が良い(燃焼室近くで燃料噴射が行われるため)
・燃料の分配が良い(各シリンダーごとに噴射ノズルがあるため)
・冷間時の始動性が良い(燃焼室近くで混合気が生成されるため)

インジェクション式のデメリットは、

・暖気状態で再始動性がわるい
・地上運用や酷暑時にべーパー・ロックしやすい(熱で配管内の燃料が気化し噴射できなくなる)
・燃料切れでエンストした時に再始動が困難

まとめ

気化器凍結の原因は3つあります。一つ目は燃料が気化するときに温度が下がり発生するもの、二つ目は、スロットル・バルブの開きが少ないときに、通過した空気または混合気がベンチュリ―効果で減圧することで温度が下がり発生するもの、三つめは、空気中に可視水分(雨粒や霧など)があり、翼の着氷と同様に-10℃から0℃の過冷却水滴が空気取り入れ口に衝突することで発生するもので、この設問で質問されているキャブレーター・アイシングは、一つ目の燃料気化によるものです。ですから、インジェクション式の吸気系統が全く凍結を起こさない訳ではありません。あくまでもキャブレーター式とインジェクション式を比較した場合、どちらが燃料の気化によるアイシングを起こしやすいかという質問ですので誤解しないようにしてください。

キャブアイス発生の兆候は、固定ピッチプロペラ装備機では回転数の低下、コンスタント・ピッチ・プロペラ装備機では吸気管圧力の低下でわかります。OAT(外気温度)をモニターし、必要に応じてキャブヒートを作動させましょう。キャブヒートは発生した氷を溶かすという使い方ではなく、予防的に使用してアイシングを起こさせないようにするのが効果的です。

降下中などエンジンの出力を絞った状態で運用中は、キャブレーター・アイシングが発生しやすいので、キャブヒートを使用し、必要に応じて出力を上げる操作を行いアイシング対策を取ってください。

以上

飛行機のピッチング:The Longitudinal Stability of an Airplane

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の安定性に関する問題です。

例題

5. PLT213 PVT

What determines the longitudinal stability of an airplane?

A) The location of the CG with respect to the center of lift.
B) The effectiveness of the horizontal stabilizer, rudder, and rudder trim tab.
C) The relationship of thrust and lift to weight and drag.

 

日本語訳

5.  PLT213a PVT

飛行機の縦方向の安定性は何によって決まるか
A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置
B) 水平安定板、方向舵、方向舵のトリムタブの効き具合
C) 推力と揚力の重量と抗力に対する関係

 

解答

A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置

 

解説

多くの飛行機の風圧中心は、飛行機の重心よりも後方の範囲に位置するように設計されていて、揚力が大きくなるほど機首が下がる方向にモーメントが働くようになっています。

同時に、水平安定板には主翼からのダウンウォッシュ(吹きおろし)が働き、飛行機の尾部を下げる力が働きます。低翼機やTテールの飛行機は、水平安定板の取り付け角をマイナスにして対応しています。(図5-23)

 

5-23

5-23

これにより、水平飛行中は重心によって機首を下げようとする力と、水平安定板によって尾部を下げようとする力が釣り合って天秤のように安定しています。

いま、飛行機の機首が外力で持ち上がった時、迎え角が大きくなり揚力が増加しますが、重心が風圧中心よりも前にあるため機首下げモーメントが発生して機首が下がります。

逆に重心位置が風圧中心の後方に位置していると、機首が外力により持ち上がった時、迎え角が大きくなり主翼の揚力が増加するため、機首をさらに持ち上げようとするモーメントが働きます。

したがって、重心位置と風圧中心(Center of Lift)の位置関係が、飛行機のピッチ安定に大きな影響を及ぼすと言えるのです。

 

飛行機の安定性とは

飛行機が釣り合いの取れた状態を邪魔するような力を受けた時、姿勢を元の状態に戻し最初の釣り合いが取れた状態に戻って飛行を続ける能力。

 

安定性の種類

静安定(Static Stability)

5-21

5-21

正の静安定  力を受けたときに元の状態に戻ろうとする。(上図左)
中立の静安定 力を受けたときに変化した状態を維持する。(上図中)
負の静安定 力を受けたとき元の状態から更に離れていく。(上図右)

 

動安定(Dynamic Stability)

正の動安定   振幅が減衰する
中立の動安定  振幅が変化しない
負の動安定   振幅が増大する

 

 

5-18

5-18

縦安定(Longitudinal Stability)
ピッチ軸(Lateral Axis)まわりの安定性のことで、重心位置に対する水平尾翼の位置、水平尾翼の面積などが影響を与える。

横安定(Lateral Stability)
ロール軸(Longitudinal Axis)まわりの安定性のことで、主翼の上反角、後退角、および主翼の取り付け位置(キール効果:重心に対して主翼が上にあるか下にあるか)が影響を与える。

方向安定(Vertical Stability) 
ヨー軸(Vertical Axis )まわりの安定性のことで、重心より後ろの胴体側面積・垂直尾翼の位置および面積が影響を与える。

 

まとめ

一般的な飛行機が水平飛行中は、正の静安定かつ正の動安定の性格を持たせています。これは、トリムを取ってあれば、手放しで飛行が出来ることを意味します。

練習機としてポピュラーなセスナ152は、旋回時の横安定においては、少ないバンク角では正の静安定、一定のバンク角では中立の静安定、それよりバンク角が増加すると負の静安定になっています。このため、あるバンク角までは飛行機が自分で復元しようとしますが、バンク角が増加するほど復元力は低下し、最後には反対にエルロンを当てないとバンク角を維持することが出来なくなります。

今回は縦安定に焦点を当てましたが、横安定や方向安定についても調べておきましょう。

 

燃料のグレード:The Grade of Fuel Used in an Aircraft Engine

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空工学の問題です。

 

例題

58. PLT250 PVT

If the grade of fuel used in an aircraft engine is lower than specified for the engine, it will most likely cause

A. a mixture of fuel and air that is not uniform in all cylinders.
B. lower cylinder head temperatures.
C. detonation.

 

日本語訳

58. PLT250c PVT

航空機のエンジンに使用する燃料のグレードが、そのエンジンに指定されているものよりも低いグレードを使用した場合、最も考えられることは?

A. 燃料と空気の空燃比がすべてのシリンダーで均一にならない
B. シリンダヘッド温度が低くなる
C. デトネーション

 

解答

C. デトネーション

 

解説

航空ガソリンの種類

7-32

7-32

現在、一般に利用可能な航空ガソリン(AVGAS)は上図の3種類です。(一番右はジェット燃料)最も使用されているのは100LLで、青色に着色されています。80や100の数字はオクタン価あるいはパフォーマンス・ナンバーといい、高いほどアンチノック性が高いことを示しています。

 

オクタン価・パフォーマンスナンバー
オクタン価とはアンチノック性を示す数字です。100を超える場合は、パフォーマンスナンバーと呼んでいます。一般に、エンジンの圧縮比を高くしていくと、エンジンの出力は大きくなっていきますが、ノッキングが起こりやすくなります。ノッキングが発生すると、パワーが出なくなるばかりか、オーバーヒートを起こしたり、エンジンにダメージを与えたりします。そこで、圧縮比の高いエンジンには、ガソリンにノッキング防止剤を添加することにより、オクタン価を高くしてノッキングが発生し難くしています。

ノッキング防止剤
航空用ガソリンには、4エチル鉛をノッキング防止剤として使用しています。いわゆる有鉛ガソリンで毒性が強く、皮膚に付着させたり、吸引したりすることを避けてください。

 

ノッキング
ノッキングが発生すると、エンジンに異音が発生し、出力が低下し、エンジン温度が上昇します。ノッキングの発生原因には大きく分けて2つあります。

プレイグニッション:エンジンの燃焼室にホット・スポット(熱源)があり、スパーク・プラグによる通常点火の前に混合ガスに点火してしまう現象。ホット・スポットの原因としては、燃焼室内に蓄積されたカーボンやスパークプラグの熱価が低い(熱の放散が悪い)などがあります。正常時、エンジンのピストンが上死点(TDC)になる手前で点火が行われるのが一般的ですが、ホット・スポットによる点火が正常時のはるか手前で起こると、ピストンが上昇するのを抑える方向で燃焼が行われるため、ピストンを燃焼ガスが叩き、カラカラ音が発生します。

7-21

7-21

 

デトネーション:通常の燃焼は、点火後、渦を巻くように徐々に燃焼・膨張して、ピストンを押し下げる力となりますが、たとえば、シリンダーの圧縮圧力が高すぎると、燃焼が正常に行われず、燃料の粒が煤のようにくすぶった状態になります。そして、ある時点ですべての燃料の粒が瞬間的、爆発的に燃焼します。その場合、ピストンを押し下げるのではなく、ピストンを叩くように力が加わって、カラカラ音が発生します。(図7-21)ピストンを押し下げるための力に変えられなかったエネルギーは、余分な熱としてエンジンをオーバーヒートさせることになります。

 

 

 

デトネーションを防止するには

その航空機エンジンに適合したグレードのガソリンを使用する。
・地上にいるときは、カウル・フラップを全開にしてエンジン温度を下げる。
・ミクスチャーをリッチ寄りに調整し、上昇率を小さくする。
・高出力状態を長時間維持しない。上昇率を大きくしない。
・エンジン計器を監視して許容範囲になっていることを常にチェックする。

 

まとめ

航空ガソリンのグレードは、燃料注入口付近に記載されているので、指定されたグレードのものを使用する。

指定されたグレードが利用できないときは、一つ上のグレードを使用する。

飛行前点検で、燃料タンクからガソリンを抜き取るときは、皮膚に付着しないように注意し、捨てるときは蒸気を吸引しないように気を付ける。

デトネーションはエンジンがオーバーヒート状態でも発生する。油温計、シリンダヘッド温度計で常時モニターする。

現在AVGAS80(赤)および100(緑)は、一部の地域を除きAVGAS100LL(Low Lead:低鉛)に移行している。

 

FAAパイロットハンドブック2016・日本語版 #16 航法 (練習問題CD付)

201610
201610

201610

飛行訓練生のバイブルを完全日本語化

米国連邦航空局が2016年に発行した飛行訓練生のための公式参考書を日本語化しました。 36ページの図解豊富な冊子と練習問題+資料集CDが付属しています。

小冊子イメージ1

 

 

 

 

 

 

 

パイロットハンドブックは、17のチャプターに分かれています。この冊子はチャプター16(航法)について詳しく解説 をしています。

アメリカでは100人に1人がパイロットライセンスを所持していると言われています。 飛行機を操縦するということは特別なことではなく、正しい教育を受ければ誰もが実現可能な 夢なのです。

アメリカの飛行訓練用教材は、誰でもわかりやすく勉強が出来るようによく考えられて作成されています。 難しい数式など、一切出てきません。

この本はFAA(連邦航空局)が編集・発行をしています。自家用操縦士の国家試験は、全てこの中から、 出題されます。(学科試験・実技口頭試問)

 

小冊子イメージ2

 

 

 

 

 

 


テキストの内容

  1.航空図について
2.緯度・経度・タイムゾーン
3.方位・針路
4.風の影響
5.距離・時間・速度・燃料消費の計算
6.地文航法・推測航法
7.風力三角形の作図
8.航法計画・フライトログの作成
9.フライトプランのファイル、オープン
10.VFR無線航法(VOR)
11.VFR無線航法(ADF)
12.VFR無線航法(VOR/DME RNAV)
13.VFR無線航法(GPS)
14.ロストポジション・緊急操作
15.迂回飛行・代替飛行場の選択

2016年の改定から、VFR無線航法にかなりの重点が置かれるようになりました。特にGPSは 近年、著しい発達を遂げていますが、それに伴いトラブルも多くなっています。汎用GPSと航空機用GPS の違いも詳しく説明しています。

CDイメージ1

 

 

 

 

 

 

 

 


付属CDの内容

1.PILOT’S HANDBOOK CHAPTER 16 NAVIGATION(原本)
2.練習問題・解説
3.図表・資料集

この教材を使用するときのアドバイスとして、最初に日本語版テキストで内容を理解したら、付属CDの 原本と照らし合わせて、英文で理解できるように頑張りましょう。

一度頭の中で理解していますから、英文も理解しやすい と思います。これは、実技口頭試験(オーラル)対策でもあります。

夢を実現するための第一歩として、この教材をお役立ていただければ幸いです。また、メールによるサポートも しております。ご不明な点は筆者に遠慮なくお尋ねください。

サウスウエスト航空1380便 緊急着陸 航空無線英文日本語訳テキスト+CD

201609

2018年4月24日、サウスウエスト航空(SWA1380)緊急着陸 全交信記録完全日本語化!

201609

201609

商品内容

1.アドバンスドATCコミニュケーションズ テキスト VOL.1(クリアカバーA4サイズ本文27ページ、添付資料4ページ)
2.付録CD(CDR-CDDAフォーマット。約15分)プレーヤーによっては再生できないものもあります。

詳細説明

航空無線(ATC)座学教育用に制作した教材。約15分間の途切れのない交信の記録です。
31ページの冊子に英文のトランスクリプト、日本語対訳および参考図を掲載しています。

201609-02

英文・和訳併記

アメリカ連邦航空局が一般公開した、2018年4月のサウスウエスト航空1380便緊急着陸 前後の交信記録音声ファイルをベースに作成しています。

航空路上を順調に飛行していたSWA1380便は、突然第1エンジンが破壊し、コンプレッサーブレードがエンジンカバーを突き破って飛散します。エンジンが片肺状態になり、胴体は部品が当たったため穴が開き、機内が急減圧した状態となります。

パイロットは、安全な高度まで機体を急降下させつつ、ニューヨーク・センターにコンタクトし緊急事態を宣言します。

SWA1380機がセンターに緊急事態を宣言してから、フィラデルフィア空港へ無事に着陸するまでどのようなドラマがあったのか、また、緊急時におけるパイロットの冷静な判断力とコントローラーの連携プレーをぜひあなたの耳でお確かめください。

201609-01

参考資料付属

CDの内容

トラック1: ARTCC 10R(航空路管制センター・セクター10)
トラック2: ARTCC 10R(航空路管制センター・セクター25)
トラック3: ATCT ℕⅮ DR(フィラデルフィア出発管制・北セクション)
トラック4: ATCT ℕA AR(フィラデルフィア進入管制・北セクション)
トラック5: ATCT LE LC(フィラデルフィア飛行場管制・東セクション)
トラック6: ATCT LW LC(フィラデルフィア飛行場管制・西セクション)

音声データは、上記6施設と航空機の実際の交信を録音・編集したものです。施設ごとに1つのトラックに収録しています。施設間の管制官や消防隊の会話も録音されています。

5つの危険な考え方:The Five Hazardous Attitudes

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、ADM(航空に関する意思決定)に関する問題です。

 

例題

27. PLT103

What antidotal phrase can help reverse the hazardous attitude of impulsivity?

A) Do it quickly to get it over with.
B) It could happen to me.
C) Not so fast, think first.

 

日本語訳

  1. PLT103c PVT

パイロットが‘衝動性’という危険な考え方を抑止するために役立つのは次のどれか

A) 克服するために物事を素早く実行する
B) 自分にも起こりうる事だと考える
C) 急がすに、考えてから行動する

 

解答

C) 急がすに、考えてから行動する

 

解説

5_hazardous_attitude

5_hazardous_attitude

The Five Hazardous Attitudes
5つの危険な考え方 (FAA-H-8083-25 Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge より抜粋)

1.Anti-Authority (Don’t tell me)
This attitude is found in people who do not like anyone telling them what to do. In a sense, they are saying, “No one can tell me what to do.” They may be resentful of having someone tell them what to do, or may regard rules, regulations, and procedures as silly or unnecessary. However, it is always your prerogative to question authority if you feel it is in error.

反権威的 (俺に口出しするな)
この考え方は、他人に自分の行うべきことを指図されたくない人に見られるものです。彼らは、”誰にも自分のすることに口は出させない”といい、他人にあれこれ指図されたり、規則、法律、手順を遵守する事について馬鹿らしいとか不必要だと考えたりして機嫌が悪くなります。ただし、権威的なものを妄信せずに疑問を抱くことも時には必要かもしれません。

 

 

2. Impulsivity (Do it quickly)
This is the attitude of people who frequently feel the need to do something, anything, immediately. They do not stop to think about what they are about to do; they do not select the best alternative, and they do the first thing that comes to mind.

衝動性 (とっととやってしまえ)
この考え方は、何をするにしても、どんなことでもすぐに急いで行わなければならないといつも考えている人に見られます。このような人は、これから行うことについて一旦立ち止まって考えたりはしません。幾通りからの選択肢から最も適切なものを選ぶのではなく、最初に頭に浮かんだことを実行してしまいがちです。

 

3. Invulnerability (It won’t happen to me)
Many people feel that accidents happen to others, but never to them. They know accidents can happen, and they know that anyone can be affected. They never really feel or believe that they will be personally involved. Pilots who think this way are more likely to take chances and increase risk.

不死身 (俺は絶対に事故を起こさない)
多くの人は事故は他人事で自分には起きないと考えます。事故は起こる可能性があるし、被害者になりうることは頭の中では理解しています。ただ、その災難が自分自身に降りかかってくるとは夢にも思っていません。パイロットでこのような考え方をする人は、危険を賭けるような行動をしがちで、事故のリスクを大きくする傾向があります。

 

4. Macho (I can do it)
Pilots who are always trying to prove that they are better than anyone else are thinking, “I can do it–I’ll show them.” Pilots with this type of attitude will try to prove themselves by taking risks in order to impress others. While this pattern is thought to be a male characteristic, women are equally susceptible.

マッチョ (俺には出来る)
パイロットの中にはいつも自分が他人より優れていることを証明したがる人がいて、”オレには出来る。いいとこを見せてやろう”と考えています。このような人は、他人に自分は凄いと思われたくて危険をあえて冒すことがあります。このような考え方は男性的なものだと思われがちですが、女性にも同様に陥る可能性のある考え方なのです。

 

5. Resignation (What’s the use?)
Pilots who think, “What’s the use?” do not see themselves as being able to make a great deal of difference in what happens to them. When things go well, the pilot is apt to think that it is good luck. When things go badly, the pilot may feel that someone is out to get me, or attribute it to bad luck. The pilot will leave the action to others, for better or worse. Sometimes, such pilots will even go along with unreasonable requests just to be a “nice guy.”

諦め (これって何の役に立つ?)
パイロットで、”こんな事しても無駄じゃないか”と考える人は、降りかかった出来事に対して、対処方法によっては大きく異なる結果を生み出すことが自分自身で分かっていません。物事がうまくいっているときは運がいいからだと考えがちで、逆にトラブルになったときは誰かが自分を陥れようとしていると感じたり、不運のせいにしたりします。そのようなパイロットは良い悪いの判断を他人任せにし、無理な要求に対しても、良い人と思われたいためにそれに従ってしまいます。

 

Antidote
対処方法

5つの危険な考え方に対する解毒剤ともいえるフレーズは次の通りです。

antidote

antidote

Hazardous Attitude
危険な考え方

Anti-Authority — Although he knows that flying so low to the ground is prohibited by the regulations, he feels that the regulations are too restrictive in some circumstances.
反権威的:地面近くを超低空飛行することは法規に違反すると知っていたが、彼は状況によっては法律は堅苦しすぎると感じている。

Antidote-Follow the rules. They are usually right.
対処方法:ルールに従う。法律はたいがい正しい。

 

Impulsivity — As he is buzzing the park, the airplane does not climb as well as Steve had anticipated and without thinking, Steve pulls back hard on the yoke. The airspeed drops and the airplane is close to a stalling attitude as the wing brushes a power line.
衝動性:スティーブが(友人を驚かせようと)公園をかすめて低空飛行していた時、彼が期待したよりも飛行機の上昇具合が悪かったので、特に考えずに強く操縦かんを引いた。すると、対気速度が低下し飛行機は失速姿勢に近づき、翼は送電線を擦った。

Antidote-Not so fast. Think first.
対処方法:そんなに急ぐな。最初に考えろ

 

Invulnerability — Steve is not worried about an accident since he has flown this low many times before and he has not had any problems.
不死身:スティーブは事故については心配していなかった。今までに何回も低空飛行をしたし何も問題はなかったから。

Antidote-It could happen to me.
対処方法:事故は自分にも起こり得る。

 

Macho — Steve often brags to his friends about his skills as a pilot and how close to the ground he flies. During a local pleasure flight in his single-engine airplane, he decides to buzz some friends barbecuing at a nearby park.
マッチョ:スティーブは自分の操縦テクニックについて、また、自分はどれだけ地面近くを飛行できるかについて、いつも友達に自慢していた。 彼の単発飛行機で周辺を遊覧飛行しているときに、公園の近くでバーベキューをしている友人たちの上をブーンと飛んで驚かせてやろうと決めた。

Antidote-Taking chances is foolish.
対処方法:わざわざ危険を冒すのは馬鹿らしい。

 

Resignation — Although Steve manages to recover, the wing sustains minor damage. Steve thinks to himself, “It’s dangerous for the power company to put those lines so close to a park. If somebody finds out about this I’m going to be in trouble, but it seems like no matter what I do, somebody’s always going to criticize.”
諦め:スティーブは事故を回避することが出来た。しかし翼は若干の損傷を被った。スティーブが心の中で思ったことは、”電力会社が公園のすぐそばに送電線を設置するから危険なんだ。 だけど、もし誰かがこの件を知ったら自分は面倒なことになる。まあ、自分が何をするにしろ、批判をする奴はいるだろうけど。

Antidote-I’m not helpless. I can make a difference.
対処方法:自分は無力じゃない。変えることが出来る。

 

結論
パイロットは自分が危険な考え方になっていないかを自分で識別し、必要なときに適切な解毒方法を適用しなければならない。

 

 

 

最低安全高度:Minimum Safe Altitude

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空法規に関する問題です。

 

例題

155. PLT101 PVT

(Refer to figure 26, area 8.) What minimum altitude is required to fly over the Cedar Hill TV towers in the congested area south of NAS Dallas?

A) 2,555 feet MSL
B) 3,449 feet MSL
C) 3,349 feet MSL

 

日本語訳

155. PLT101b PVT

(図26.エリア8) Dallas海軍航空基地の南側密集区域にある、Cedar Hillテレビ塔上空を飛行する場合の最低高度は

A) 海抜2,555 フィート
B) 海抜3,449 フィート
C) 海抜3,349 フィート

 

解答

B) 海抜3,449 フィート

 

解説

fig.26_area8

fig.26_area8

§119 of Part 91 Over Congested Areas: an altitude of 1,000 feet above the highest obstacle within a horizontal distance of less than 2,000 feet.

連邦航空法パート91セクション119によると、密集地域の上空:水平距離2,000フィート未満にある最も高い障害物の高さから、さらに1,000フィート加えた高度

図26によると、Cedar Hill TV Towerの高さは2,449 ft MSL (1,640 ft AGL)なので、1,000 ft 加えた 3,449ft MSLがこの区域の最低安全高度となります。

 

Minimum Safe Altitude

  1. Anywhere: an altitude allowing a safe emergency landing without undue hazard to person or property on the ground;
  2. Over Congested Areas: an altitude of 1,000 feet above the highest obstacle within a horizontal distance of less than 2,000 feet;
  3. Over Populated Areas: an altitude of 500 feet AGL;
  4. Over Open Water or Sparsely Populated Areas: an altitude allowing for a linear distance greater than 500 feet from any person, vessel, vehicle, or structure;
  5. Helicopters: If without hazard to persons or property on the surface, an altitude lower than in definitions 2, 3, and 4 above, provided in compliance with any routes or altitudes specifically prescribed for helicopters by the FAA.

 

最低安全高度

  1. すべての場所:地上の人または物件に対し、過度の危険性を及ぼすことなく安全な不時着を行うことが可能な高度。
  2. 密集市街区域:水平距離2,000フィート未満にある最も高い障害物の高さから、さらに1,000フィート加えた高度。
  3. 人口密集地:対地500フィートAGL(Above Ground Level)の高度。
  4. 開放水面または過疎地域:地上の人、物件から直線距離で500フィートの高度。
  5. ヘリコプター:地上の人、物件に危害を与えない場合で、FAAによって特別に規定されたヘリコプターのための飛行ルートおよび高度に従うことにより上記2,3,4より低い高度で飛行できる。

 

その他

図26のようなセクショナルチャートでは、密集市街区域を黄色の塗りつぶしで表現しています。
夜間飛行したとき、この黄色のエリアの輪郭と、建物の明かりや街路灯などで明るいエリアの輪郭が一致するので、暗くても自分の位置を確認しやすくなっています。

 

obstacles

obstacles

また、セクショナルチャートでは、障害物(Obstacles)の高さをMSLとAGLの両方で記載している場合があります。
太字の高度がMSL(Mean Sea Level)、かっこ内の高度がAGLです。飛行中、衝突防止や最低安全高度を確認するのに必要なのはMSLですが、塔自体の高さを判断するのにAGLがあると便利なためです。

余談ですが、電波塔の中には本体は細いため直立させるのにガイワイヤー(支線)を周囲から張っているものがあります。本体のみに気を取られてガイワイヤーに衝突しないよう注意してください。

 

 

 

 

ヘリコプターの低周波振動:Low Frequency Vibrations

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、ヘリコプターの振動に関する問題です。

例題

  1. PLT472 PVT

While in level cruising flight in a helicopter, a pilot experiences low-frequency vibrations (100 to 400 cycles per minute). These vibrations are normally associated with the

A) engine.
B) cooling fan.
C) main rotor.

 

日本語訳

251. PLT472c PVT

ヘリコプターで水平巡航中、操縦士が低周波振動(1分当たりの振動が100 から 400回)を感じた。この振動の発生源は、

A) エンジン
B) 冷却ファン
C) メインローター

 

解答

C) メインローター

 

解説

components of a helicopter

components of a helicopter

ヘリコプターは多かれ少なかれ振動がつきものです。エンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、メインローター、テイルローターなど回転部のアンバランスやローターのトラッキング不良(各ローターの先端部が異なる位置を通過する)などで振動が発生します。

振動は乗員に不快感をもたらすだけでなく、リベットのゆるみ、金属疲労による亀裂やベアリング部の摩耗、損傷が早期に発生してしまいます。

 

ヘリコプターの回転部分で一番高速回転しているのはエンジンで、レシプロエンジンの場合、毎分2,000回転(2.000rpm)以上です。

エンジンの回転は減速機(トランスミッション)に伝達され、メインローターとテイルローターに減速されて出力されます。

通常、メインローターへの回転は、減速機により(100-500rpm)に減速されます。

テイルローターへの回転は、減速機により(1,000-2,000rpm)に減速されます。

したがって、ヘリコプターの各部回転数は、エンジン→テイルローター→メインローターの順に低くなっています

 

レシプロエンジン(ピストンエンジン)の場合、構造上ある程度の振動が発生するのが普通ですが、スパークプラグの一つが点火不良を起こしたり、点火時期の不良、気化器凍結やミクスチャーのコントロール不良があると、毎分2,000回以上の振動が発生します。これをHigh Frequency Vibrations(高周波振動)と呼んでいます。

 

タービンエンジンの場合、回転数が高いため異常振動があっても体感することが難しいと言われています。

 

トランスミッションのテイルローター側伝達経路からテイルローター上でアンバランスが発生した時、毎分1,000-2,000回の振動が発生します。これをMedium Frequency Vibrations(中間周波振動)と呼んでいます。

この振動の原因は、トランスミッションのテイルローター側伝達経路のアンバランス、冷却ファン(テイルロータードライブシャフトからVベルトを介して回転する)、テイルローター左右の重さの違いによるアンバランス、各テイルローターの重量分布の違いによるアンバランス(ダイナミックアンバランス)そしてテイルローターのトラッキングのずれなどがあります。

パイロットは、アンチトルクペダルから足に振動が伝わることで体感することが出来ます。これは、ほとんどのヘリコプターにおいて、ペダルのコントロールに油圧機構が無いため、振動がダイレクトに伝わるためです。

anti_torque_pedal

anti_torque_pedal

 

トランスミッションのメインローター側への伝達経路からメインローター上でアンバランスが発生した時、毎分100-500回の振動が発生します。これをLow Frequency Vibrations(低周波振動)と呼んでいます。

この振動の原因は、トランスミッションのメインローター側への伝達経路上のアンバランス、メインローターのアンバランスおよびトラッキングの不良などがあります。

パイロットは、サイクリックピッチコントロールや機体が小刻みに揺れたり、体が前後左右に揺すられることで体感することが出来ます。

cyclic_pitch_control

cyclic_pitch_control

 

結論

日ごろから、ヘリコプターの正常な状態の振動を覚えておくことが大切です。異常な振動を感じたときはそのまま放置しないで、出来るだけ速やかに予防着陸を行い、整備士に伝えてください。その時にどのような振動であったかを説明することで、故障の原因探求の助けになります。