フラップの役目:One Purpose of Wing Flaps

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の主翼に装備されているフラップに関する問題です。

例題

9.PLT473
What is one purpose of wing flaps?

A) To enable the pilot to make steeper approaches to a landing without increasing the airspeed.
B) To relieve the pilot of maintaining continuous pressure on the controls.
C) To decrease wing area to vary the lift.

 

日本語訳

9. PLT473a PVT
翼のフラップの役割のひとつとして、

A) 対気速度を上昇させることなく急角度の着陸進入を可能にする
B) 操縦装置を保持し続けるための力を軽減する
C) 揚力を変化させるために翼面積を減少させる

 

解答

A) 対気速度を上昇させることなく急角度の着陸進入を可能にする

 

フラップの概要

wing_flaps

フラップは主翼の後縁に装備されていて、翼断面(エアフォイル)のキャンバーを変化させることにより、同一迎え角時の揚力を増加します。同時に誘導抗力も増加します。

着陸進入時にフラップを展開すると、機首を下げて(ピッチ・ダウン)滑走路が良く見える状態でも、対気速度が上昇せず、所定の進入速度を維持することが出来ます。

また、フラップを展開することにより、エアホイルがキャンバーの大きい低速に適した形状となり、失速時の対気速度を低くすることが可能です。

 

フラップの種類

Four Common Types of Wing Flaps

Four Common Types of Wing Flaps

プレーン・フラップは構造が簡単で、後縁部全体を下方向に曲げることにより、キャンバーの湾曲を大きくして揚力を増加させます。同時に誘導抗力(Induced Drag:揚力発生に伴う空気抵抗)が増加するとともに、風圧中心が後方に移動するため、機首下げモーメントが発生します。

スプリット・フラップは、後縁の下面のみを分離(Split)して下方向に動かす構造で、プレーン・フラップに比べて若干揚力を多く発生します。またフラップ展開時に風圧中心の移動が少なく、ピッチの変化が少ない特徴があります。しかし、後縁の直後の空気の流れが乱れるために多くの抵抗が発生します。

スロッテッド・フラップは展開時に主翼とフラップの間に隙間(Slot)が出来る構造で、主翼下面の高圧気流がスロットを通りフラップの上面に沿って流れるため、空気の剥離を遅らせるとともに揚力を増加させる特徴があります。現在の飛行機では最もポピュラーな形式です。

ファウラー・フラップはスロッテッド・フラップの一種で、展開時にフラップが後方にせり出すようになっています。これによりキャンバー形状を変化させるだけでなく、翼弦長(コード)を大きくし主翼の面積を増大させます。展開量が小さいときは抵抗の増加が少ない状態で揚力を増加させ、さらに展開していくに従い、揚力の増加量は減少し、抗力の増加量が増大する特徴があります。ファウラー・フラップは1924年に米国陸軍のHarlan D. Fowlerが発明し、現在は大型の旅客機に採用されています。

 

問題の解説

Aが正解。
Bはトリム・タブの説明。トリム・タブは動翼の後縁部に取り付けられていて、固定式のものと操縦席から操作可能なものがあります。セスナ152にはラダーに固定式のものが、エレベーターに可動式のものが装備されています。エレベーター・トリムは操縦席のホイールを操作することにより、コントロール・プレッシャーを抜いて、操縦を楽にしてくれます。
Cは不正解。フラップは翼断面の形状を変化させて揚力および抗力を増大させます。ファウラー・フラップのように翼面積を大きくするものもあります。

 

まとめ

フラップの種類の項で述べたように、フラップを展開すると風圧中心が後方に移動するため、ピッチダウンのモーメントが発生します。しかし実際にはフラップ展開時のピッチ変化は機体によって異なります。

セスナ152などの高翼機はフラップ展開時に誘導抗力が胴体上部に取り付けられた主翼に作用するために発生する機首上げモーメントや主翼後流の吹きおろし(ダウン・ウォッシュ)が水平尾翼を下に押すため機首上げとなる傾向が顕著です。

またパイパーチェロキーなどの低翼機はフラップ操作時にピッチ変化が少ない、あるいは機首下げ傾向があります。これは前述の風圧中心の後方移動、誘導抗力が胴体下部に取り付けられた主翼に作用することによる機首下げモーメントおよび主翼のダウン・ウォッシュが水平尾翼に作用しないため(特にT尾翼機)です。

 

 

自動方向探知機:Automatic Direction Finder

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、ADFに関する問題です。

例題

68. PLT014

ADF8

ADF8

(Refer to figure 31, illustration 8.) If the magnetic bearing TO the station is 135°, the magnetic heading is

A) 135°.
B) 270°.
C) 360°.

 

日本語訳

68. PLT014cPVT
(図31イラスト8参照)
局への磁方位が135°の場合、磁針路は次のどれか

 

解答

C) 360°.

解説

問題の解き方

MB=RB+MH    という公式を使います。

ADF_compass

ADF_compass

MB=局への磁方位 (Magnetic Bearing to the Station): 無風の時、この磁方位に向かって飛行すれば局に到着できる。
RB=自機を基準とした局への方位 (Relative Bearing to the Station) :ADFの指示を読み取った値
MH=磁針路 (Magnetic Heading) :飛行機の磁石が示す方向

問題の数値を公式に当てはめると、

135=135+MH

MH=135-135

MH=0

解答: 磁針路 000 (360)

 

 

予備知識

ADF (Automatic Direction Finder)について:
ADFは電波を送信している局(NDB局)への方向を指針で指示する計器です。
AMラジオと同じ周波数帯(中波)を使用しています。アンテナの指向性を利用したもので、手動でアンテナの向きを変える方向探知機に対して、電波の強さに応じて自動的にアンテナの向きを変化させるようになっています。

使い方の例として、下記チャートのPETIS(397Khz) という局に周波数を合わせると、モールス信号で局のID(SB)
が聞こえます。

NDB_PETIS

NDB_PETIS

・・・(S)
ー・・・(B)

アメリカでは、モールス符号の後に英語音声で、”PETIS NDB”と送信してくれる場合もあります。

パイロットは正しいNDBを受信したことをこれで確認することが出来ます。

局を受信すると同時に計器盤のADF指示器の針が動き、局の方向を指します。
ADFのダイヤル(アジマス:Azimuth)は、真上が0 (360)、右真横が090、真後ろが180、左真横が270となっています。(ダイヤル固定式の場合)

図31の8では、135を指針が示しています。
これをRB135 (Relative Bearing 135)といい、航空機の機首を基準(ゼロ)とした場合の、局へ向かう方位です。

図31の8の状態で、飛行機が磁針路000 (360)で飛行している場合、機首を135になるように右旋回すれば、
局への磁針路(Magnetic Heading to the Station)となります。

図31の8の状態のとき、もしも飛行機が磁針路090 (東)で飛行している場合、磁針路をいくらにすれば、局へ向かうことが出来るでしょうか?

東の針路090からさらに時計回りで135°方向に局があるので、090+135=225の方向となります。
先ほどの式に当てはめると、

MB225=RB135+MH090

参考

無風の時は、ADFの針を真上に合わせて飛行するとNDB局に向かって飛行することが出来ます。
局を通過するとADFの針は反転し真下を向きます。

左からの横風がある場合

ADF_tracking

ADF_tracking

ADFの針を真上(RB000)に維持して飛行すると、飛行機はコースに対し右に流されながら、磁針路が徐々に左方向に変化します。
このようにして局へ向かうことをホーミングと言います。

横風があるとき、局へ最短距離で飛行するためには、横風の方向に機首を向ける(クラブを取る)必要があります。

例えば、右の図で風が西方向270から吹いているとき、航空機がNDB局へ340のコース上を飛行する場合、左に10°クラブをとりMH330で飛行すると、MB340のコース上を最短距離で局に向かうことが出来ます。
このようにして局へ向かうことをトラッキングと言います。

このとき、ADFの指示は010になっています。

まとめ

ADFの中には、この問題のようにアジマスが固定のもの、パイロットが任意に目盛を回転させることが出来るもの(MBを計算しなくてよい)、さらにはアジマスがコンパスと連動していて目盛を回転する必要すらないものがあります。

前述のように中波帯を使用しているため、ラジオのAM放送を受信して、発信電波塔に向かい飛行することも可能です。

ADFは局への方向を矢印で示してくれるので使い方は一見簡単そうですが、横風があるときにホーミングを行った場合、直線のコースにはならず最短距離で局へ向かうことが出来ません。

最短距離で向かおうとする場合は上記のようにトラッキングで飛行する必要があります。

ATIS:飛行場情報放送業務

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空通信に関する問題です。

例題

527. J11PVT
Automatic Terminal Information Service (ATIS) is the continuous broadcast of recorded Information concerning

A) pilots of radar-identified aircraft whose aircraft is in dangerous proximity to terrain or to an
obstruction.
B) nonessential information to reduce frequency congestion.
C) noncontrol information in selected high-activity terminal areas.

 

日本語訳

527   J11cPVT
飛行場情報放送業務(ATIS)は、録音による情報を連続して放送している。その内容は何に関係することか
A)レーダーにより識別されている航空機の操縦士に対しその航空機が、地形や障害物に異常接近して衝突の
危険性があること
B) 無線の混雑を減らすため、重要度の低い情報を連続放送する
C) 特定の混雑の激しい空港における管制以外の情報

 

解答

C) noncontrol information in selected high-activity terminal areas.

 

ATIS 例文

LAGUARDIA AIRPORT INFORMATION QUEBEC

2103Z special
協定世界時21時03分 スペシャルレポート

WIND 360 AT 10
風向360度 風速10kt

VISIBILITY 10
地上視程10SM

4600 SCATTERED,25000 SCATTERED
4600FT 1/10から5/10の雲量、25000FT 1/10から5/10の雲量

TEMPERATURE –6
気温 -6℃

DEW POINT –14
露点温度 -14℃

ALTIMETER 3025
高度計規正値 30.25インチ

EXPRESSWAY VISUAL RUNWAY31 APPROACH IN USE
計器進入はエクスプレスビジュアルランウエイ31を使用中

DEPART RUNWAY 4
出発滑走路 4

BRAVO 4 HOLDLINE IN USE
B4停止線が使用中

LAGUARDIA CLASS BRAVO SERVICES AVAILABLE ON FREQUENCY 126.05
ラガーディア・クラスBレーダーサービスの周波数は126.05MHz

TEMPORARY FLIGHT RESTRICTION OVER MANHATTAN ISLAND
一時的な飛行制限空域がマンハッタン島上空に発令されています

ALL PILOTS READBACK OF HOLD SHORT INSTRUCTIONS AND ASSIGNED ALTITUDE.
全てのパイロットは着陸後一旦停止の指示および指定高度を復唱してください

ADVISE ON INITIAL CONTACT,YOU HAVE INFORMATION QUEBEC
最初にコンタクトを行うとき、インフォメーションQを得ていることを申し出てください

 

ATISとは

航空交通の多い空港で、管制官の仕事量、周波数の混雑を緩和するため、管制以外の航空情報を録音によりエンドレス放送を行っている。

放送の内容は、気象情報、使用滑走路、利用可能な進入経路および重要なNOTAMなど。

録音は一定間隔でアップデートされるほか、気象の急変などに応じて随時更新される。アップデートごとにA-Zの順でICAO Spelling Alphabetによって呼称される。
例:Information “Alpha”, Information “Bravo”など。

パイロットはATCにコンタクトする前にATISを聴取し、最初の交信時に管制官にATISを受信していることを報告する。

交信例:
Oakland ground 1234A Cessna 172/U at east parking, request taxi for runway 27R we have information “Delta”.
オークランド地上管制、こちらはN1234A セスナ172トランスポンダーはモードC、東側の駐機場にいます。滑走路27Rへのタキシング許可願います。インフォメーションDを聴取しています。

 

icao_phonetic Alphabet

icao_phonetic Alphabet

 

日中の衝突防止テクニック:Eye movements during daytime collision avoidance

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、エアロ・メディカル・ファクターに関する問題です。

例題

29.PLT099
Eye movements during daytime collision avoidance scanning should

A) not exceed 10 degrees and view each sector at least 1 second.
B) be 30 degrees and view each sector at least 3 seconds.
C) use peripheral vision by scanning small sectors and utilizing off-center viewing.

日本語訳

29. PLT099aPVT
昼間、衝突防止のための見張りを行うための適切な目の動かし方は次のどれか
A) 10°を超えない範囲の空間をそれぞれ最低1秒間探す
B) 30°の範囲の空間をそれぞれ最低3秒間探す
C) 空間を小さな範囲に分け、中心を避けて見ることにより周辺視野を活用する

解答
A) not exceed 10 degrees and view each sector at least 1 second.

 

解説

日中の見張り方法:

空間を10°を越えない範囲で細かく区切り、それぞれのセクターを1秒間以上焦点を当てて他機を探す。

 

夜間の見張り方法:

空間を細かく区切り、目標物の中心を避けて見ることにより周辺視野を活用する。

 

目の仕組み

目の構造はカメラと一緒で、景色はレンズを通して網膜上で焦点を結び、視細胞がセンサーとなって視神経経由で脳に情報が伝わる。

eye

eye

 

 

網膜の構造

黄斑:水晶体(レンズ)に正対する位置の網膜には黄斑があり、その中心には1mm程度の大きさの中心窩(Fovea) がある。文字を読んだり、物体に焦点を当てて見るときはこの部分を使用する。

錐状体(CONE):視細胞の一種で表面が円錐状をしている。中心窩部分に集中していて物の色や形状をはっきりととらえることが出来る。明るい場所から暗い場所へ移動した場合、適応は速い。

杆状体(ROD):視細胞の一種で表面が棒状をしている。網膜の周辺部にあり明暗を敏感にとらえることが出来る。明るい場所から暗い場所へ移動した場合、適応は遅く約30分必要だが、一旦適応するとその感度はCONEの10,000倍といわれている。

 

視野の種類

night_blind_spot

night_blind_spot

中心視野:物の色や形がはっきりと認識できる。範囲は狭い。(昼間の見張りに有効)

周辺視野:明暗や動きを敏感に感じることが出来る。範囲は広い。(夜間の見張りに有効)

 

夜間の盲点

夜間、RODに比較して感度の低いCONEで物体を直視しようとすると、視界から物体が消失してしまうことがある。

 

 

結論

昼間、見張りを行う時はCONEを活用する。CONEを活用するためには空間を10°以内の狭い範囲に区切り、それぞれに短時間焦点を当てる。
夜間、見張りを行う時はRODを活用する。RODを活用するためには目標を直視するのではなく、5-10°程度ずらした位置で見るようにする。

また、夜間飛行を行う時は事前に目を慣らす必要がある。30分程度はヘッドライトなどの明るいものを直視しないこと。
コクピットの照明には赤色灯を使用することで眩惑を防止することが出来る。

 

 

飛行場の標識:Mandatory Instruction Signs

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、飛行場標識に関する問題です。

例題

19 . PLT141
A left turn at this intersection would place the aircraft

26-8

26-8

A) ready for a runway 26 intersection takeoff.
B) on the taxiway leading to runway 26.
C) ready for a runway 8 intersection takeoff.

 

この標識のある交差点で左折した場合、航空機が位置するのはどこですかという問題です。

解答は(C)の滑走路8途中からの離陸待機状態

 

解説

airport_signs

airport_signs

上の図は、飛行場の標識の抜粋です。赤地に白文字の標識は、その先に行くためにはATCの許可が必要です。
サンプル標識 ”26-8” は、前方に滑走路26(8)があることを示していて、現在航空機は誘導路上または交差する滑走路上にいます。

下の図は、設問における航空機の現在位置を表しています。(説明のため地図を逆向きにしています)

rw26-8

rw26-8

航空機は今、誘導路G上にいて、前方には滑走路があります。滑走路入り口付近には赤の標識(26-8)が設置されています。
航空機は誘導路Gから滑走路に許可なしに進入してはいけません。

rw_boundary

rw_boundary

左図は誘導路と滑走路の境界の路面上に設けられたマーキングです。誘導路側は実線、滑走路側は点線で表されていて、誘導路側から許可なしに進入不可、滑走路側からは許可を受けずに退出可能です。

 

ATCから許可をもらい、誘導路から滑走路に左折して進入すると、航空機は滑走路8の途中に位置することになります。
ちなみにATCは「Cessna 1234A Runway 8 Line Up and Wait」と言ってきます。

パイロットは左折して滑走路に進入して滑走路にアラインし停止します。

 

結論

飛行場標識で赤地に白文字のものは、(Mandatory Instruction Signs)といって、ATCからの許可を受けなければこの位置から先へ行ってはいけないことを表しています。

飛行場標識で黒地に黄文字のものは、(Information Sign)といって、現在地(滑走路・誘導路)、滑走路の残距離、滑走路・誘導路への方向(矢印があるもの)を表しています。

 

26-8

26-8

今回の問題で使用された標識は、ミニチュアの滑走路だと考えればわかりやすいと思います。滑走路を左から右に使用する場合は(26)、右から左に使用する場合は(8)となり、問題では航空機は滑走路を右から左に使用するので、誘導路から左折した時は、滑走路8に進入となります。

離陸滑走距離:Ground Roll, Total take off distance over a 50 foot obstacle

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空機性能の知識と絡めた、パイロットの判断に関する問題です。

例題

28. PLT271
A pilot and two passengers landed on a 2,100 foot east-west gravel strip with an elevation of 1,800 feet. The temperature is warmer than expected and after computing the density altitude it is determined the takeoff distance over a 50 foot obstacle is 1,980 feet. The airplane is 75 pounds under gross weight. What would be the best choice?

A) Taking off into the headwind will give the extra climb-out time needed.
B) Try a takeoff without the passengers to make sure the climb is adequate.
C) Wait until the temperature decreases, and recalculate the takeoff performance.

 

take_off_distance

take_off_distance

日本語訳

28 . PLT271cPVT

パイロットと2名の乗客が標高1,800ftに位置する東西2,100ftの砂利敷き滑走路に着陸した。気温は予測よりも高く、密度高度を計算したところ離陸後50ftの障害物を越えるまでの離陸距離は1,980ftであった。飛行機は許容最大重量に対して75ポンド軽い。もっともよい判断は次のどれか。

A)向い風方向に離陸することにより必要な上昇時間を延ばしてくれる
B)適切な上昇が行えるかどうか乗客を乗せずに離陸して確認を取る
C)気温が低下するのを待つ。そして再度離陸性能を計算する

 

解答

(C)Wait until the temperature decreases, and recalculate the takeoff performance.

 

 

解説

離陸距離に影響するもの

機体重量
重量が大きいほど離陸に必要な滑走距離は長くなります。上のグラフの航空機だと機体重量2,200ポンドの場合は58ノットで離陸できるのに対して、機体重量2,950ポンドの場合は66ノットまで加速しなくてはなりません。また、重量が大きいほど加速に必要な時間もより長くなり滑走距離が延びます。

 

風向・風速
向い風で風速が大きいほど離陸時の滑走路と飛行機の相対速度は小さいので、滑走距離は短くて済みます。

 

密度高度
標高の高い飛行場は気圧が低く空気が薄い状態となるため、主翼が発生する揚力、エンジンの出力が低下し、より長い滑走路を必要とします。
たとえ標高が低い飛行場でも、気温や湿度が高い場合は、空気の密度が小さくなり、(密度高度が上昇する)標高の高い飛行場と同じように離陸に必要な距離は長くなってしまいます。

 

滑走路の状態
芝の滑走路の場合、ランディングギヤに掛かる抵抗が増加し離陸滑走距離が長くなります。砂利(グラベル)や濡れた滑走路の場合、ホイールブレーキの効きが悪く着陸滑走距離は伸びますが、離陸滑走距離はそれほど影響は受けません。また、滑走路の長手方向に傾斜がある場合、上り坂になっていると滑走距離は伸びます。

 

操縦の方法
離陸時のミクスチャー調整や、ローテーション時の速度、フラップの開度設定、ランディングギヤ引き込み時期などを正しく行わない場合は障害物を越えるまでの離陸距離が長くなります。上記のグラフ(POH抜粋)のデータは、社運を賭けた優秀なテストパイロットが完全に整備された機材を使用し全力で出した結果です。

 

問題から読み取れること

・標高1,800フィートなので平地に比べれば離陸距離は長くなる。

・滑走路面は砂利敷きなので、滑走距離が長くなることはあっても、縮まることはない。

・滑走路全長2,100フィートに対して50フィートの高さの障害物を越えたときの離陸総距離が1,980フィート。これは、滑走路終端から約40m手前のところで対地高度が15mしかないということ。

・問題では具体的な風向風速が提示されていないので、どれくらい滑走距離が短くなるか判断できない。

 

選択肢

(A)の説明は不適切。向い風の大小が、飛行機の上昇率(1分当たりの獲得高度)に影響することはありません。ただし、向い風が大きい方が滑走距離は短く上昇角度も大きくなり、設問の状況に有利に働きますが問題には具体的な向い風の数値がないので、安全な離陸が出来るかどうかはわかりません。

(B)は、わざわざ乗客を降ろして実験しなくても、グラフから離陸距離を求めることが出来ます。しかし、それで安全を確認しても乗客を乗せた場合、条件が変わるので安全に離陸できるかはわかりません。

(C)が与えられた選択肢の中ではベストです。例えば14時の気温が35度でも、夕方、あるいは次の日の早朝まで待てば気温は低下するはずです。また、風の条件も良くなっているかもしれません。
問題では一応滑走路全長より短い距離で離陸可能ですが、上記で説明したように少しでも条件が変われば、40mの余裕はすぐに無くなってしまいます。

 

結論

離陸滑走距離の計算だけではなく、気象の変化、到着予定時刻など、余裕をもって計画することが安全に直結します。しかし、今回の問題のような状況になった後では、飛行を延期することは簡単なことではありません。乗客も怒るでしょうし、飛行機のレンタル代、駐機料やホテル代など経済的にも負担が掛かります。それなら無理をしてでも行ってしまおうと考えるのが人情です。一番最初の計画段階で飛行場の気温予測を厳しくしていれば、目的地や時間帯を変更するなど対処できたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

S字旋回:While practicing S-turns

 

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、エアーワーク(空中操作)の問題です。

例題

222. PLT219 PVT
(Refer to figure provided.) While practicing S-turns, a consistently smaller half-circle is made on one side of the road than on the other, and this turn is not completed before crossing the road or reference line. This would most likely occur in turn
A) 1-2-3 because the bank is decreased too rapidly during the latter part of the turn.
B) 4-5-6 because the bank is increased too rapidly during the early part of the turn.
C) 4-5-6 because the bank is increased too slowly during the latter part of the turn.

 

 

222. PLT219b PVT
(図 67.)S字旋回の練習を行うとき、片側の半円が他方より小さくなり、道または基準線を過ぎても旋回が完了しない状態になりやすいのは次のどの場合か
A) 1-2-3 の旋回。旋回後半のバンク角減少が早すぎた場合
B) 4-5-6 の旋回。旋回前半のバンク角増加が早すぎた場合
C) 4-5-6 の旋回。旋回後半のバンク角増加が遅すぎた場合

 

考え方

S字旋回の練習は、道路などの地上目標を中心線にして実施します。問題のように風が中心線に対して直角に吹いている場合、無風時と同じように操縦を行うと、風上側の半円が小さく、風下側の半円が大きくなってしまいます。

これは、機体が風によって風下側に流されてしまうためで、地上軌跡がきれいなS字になるようにするには、位置によってバンク角を増減したり、バンクを取るタイミングを変える必要があります。

s_turns

s_turns

そこで、上図のように機体が追い風になっているときのバンク角を大きく(バンクを取るタイミングを早く)、機体が向い風になっているときのバンク角を小さく(バンクを取るタイミングを遅く)します。

上図の3-4-5の旋回は、センターラインよりも風上側の半円なので、無風時よりも半円が小さくなりがちです。そこで、機体が向い風になっている図の3の位置でバンク角を小さく(バンクを始めるタイミングを遅く)しなければなりません。

 

解答

正解は、B) 4-5-6 の旋回。旋回前半のバンク角増加が早すぎた場合。

 

上図において、
バンク角を大きくする(タイミングを早くする)・・・1と6
バンク角を小さくする(タイミングを遅くする)・・・3と4
中間のバンク角にする・・・2と5

 

 

まとめ

このような問題は、英文の意味が分かれば比較的容易に理解できるのではないでしょうか。
当サイトでは、FAA自家用操縦士筆記試験問題集の日本語訳を販売しています。ご利用いただければ幸いです。

 

 

 

 

磁針路の求め方:Determine the magnetic heading for a flight

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航法の問題です。

例題

  1.  H987 PVT
    (Refer to figure 22.) Determine the magnetic heading for a flight from Mercer County Regional Airport (area 3) to Minot International (area 1). The wind is from 330° at 25 knots, the true Airspeed is 100 knots, and the magnetic variation is 10° east.

A) 002°
B) 012°
C) 352°

 

Mercer County Regional AirportからMinot Internationalへの磁針路を求めなさい。風は330° から 25 knots、真対気速度は100ノット、偏差は10°Eとする。

 

手順1

図22で出発地と目的地を見つけて、直線を引きます。(下図)

手順2

プロッターを使用してTC(真航路)を求めます。(下図)

true_course

true_course

プロッターを使用して、図のように緯度の線とプロッターの目盛りの合致点を測定しますが、あらかじめおおよその方位を考慮して、メモリを選びます。

この問題の場合、TCはおおよそ北(000)なので、プロッターの目盛り(100,280,010,190)のうち一番近い010(10)を使用します。

TC=012

この地図上のコースを飛行すれば目的地に到着できます。

 

手順3

手順2で求めたTCにWCA(偏流修正角:Wind Correction Angle)を加減してTH(真針路:True Heading)を求めます。

フライトコンピューターを使用して、WCAを求めます。(下図)

W330_25kt

W330_25kt

その1.風向風速をインプットする

フライトコンピューターのTrue Index (▼)に風向330になるようにダイヤルを合わせる。

グロメット(ハトメ)から上方向に風速25ノットの場所(図では125ノット)に鉛筆で点を付ける(ウインド・ドット)
このとき、スライダーを調節して読みやすい位置(図では100ノットのライン)にしておくとマークしやすい。

 

012_100kt

012_100kt

その2.TC・TASをインプットする

フライトコンピューターのTrue Index (▼)にTC(012)をダイヤルを調節して合わせる。

ウインド・ドットにTAS(100)の弧線をスライダーを調節して合わせる。

 

その3.WCAを求める。

ウインド・ドットが中心線から10°左にずれているのを確認する。

WCA=10L(-10°)

 

TC±WCA=TH

012-10=002(TH)

 

手順4

THをMH(Magnetic Heading)に修正する。

磁石の北(磁北)と地図の北(真北)はずれているので、これを修正します。

問題では偏差(Magnetic Variation)は10°E(磁北は真北の10°東側)なので、地図上の真北(000)を飛行するためには、磁石を(350°)に保持する必要があります(‐10°)

TH±VAR=MH

002-10=352(MH)

 

答えはCの352°となります。

 

まとめ

TC±WCA=TH

TH±VAR=MH

これにコンパスの自差(Deviation)を修正してCH(Compass Heading)を求め、飛行します。

MH±DEV=CH

 

WCAを求めるにはフライトコンピューターが便利ですが、風力3角形を作図して求めることもできます(下図)

wind_triangle

wind_triangle

今回の問題では使用しませんでしたが、WCAを求めるときにGS(対地速度:Ground Speed)も一緒に求めることが出来ます。

グロメットに対応するスライダーの目盛りを読むと、80ノットであることが分かります。
目的地までの距離とGSが分かれば所要時間(ETE)が計算でき、出発時間から、到着予定時間(ETA)を求めることもできます。

このようにして飛行することを推測航法(Dead Reckoning)といいます。

 

最後に、このような問題を解く場合は前もって飛行をイメージをすることが大切です。

例えば、
北のコースで、風が北西から吹く場合、流されないようにTCより左向きにクラブを取る。
偏差が東寄りなので、磁針路はマイナス(左向き)にする。
向い風なので、GSはTASよりも小さくなる。
など。

地図上で、VORのコンパスローズを見れば、偏差をイメージすることが出来ます(コンパスローズは磁方位で書かれているため)

 

おわり

 

 

 

ドラッグヒンジの役割:the purpose of the Lead-lag (Drag) hinge

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、ヘリコプター工学の問題です。

 

例題

566. H703 PVT
The purpose of the lead-lag (drag) hinge in a three-bladed, fully articulated helicopter rotor
System is to compensate for
A) Coriolis effect.
B) coning.
C) geometric unbalance.

 

全関節型ローターに装備されているリード・ラグ・ヒンジの役割は何ですかという問題です。

 

fully_articulated_rotor_system

fully_articulated_rotor_system

 

予備知識

全関節型ローターヘッドシステム(Fully Articulated Rotor System):ローターヘッドに対して、ローターが上下(フラッピング)前後(リードラグ)に動くことが出来る関節(ヒンジ)を設けているもので、3ブレード以上のメインローターを持つヘリコプターに採用されているものがある。(ヒューズ269シリーズなど)

 

Advancing (Retreating) Blade :ヘリコプターが前進飛行中、相対風(Relative Wind)を受ける側(風上側)のローターブレードを、前進側のブレード(Advancing Blade)といい、風下側のローターブレードを後退側のブレード(Retreating Blade)という。ヘリコプターを上から見て左回転のローターシステムでは、進行方向右側に位置するローターブレードがAdvancing Bladeとなる。

 

揚力の不均衡(Dis-symmetry of lift ):ヘリコプターが前進飛行中、相対風を受ける側のローターブレード(Advancing Blade)の揚力が、追い風側のブレード(Retreating Blade)の揚力よりも大きくなり、ローターシステム内で揚力の不均衡が起こる。

 

フラッピング(Flapping ):揚力の不均衡により、前進側のブレードの揚力が後退側のブレードよりも大きくなるため、全関節型ローターシステムではフラッピング・ヒンジを設けて、前進側のブレードを上方向に反らせることにより、揚力の垂直成分を減じ、空力的にバランスをとっている。

 

コリオリ効果(Coriolis Effect ):前進側のローターブレードがフラッピングすると、ローターブレードの見た目の重心がローターマスト(回転軸)方向に移動する。このとき同時に前進側ローターブレードの回転速度を増加させようとする力(コリオリの力)が働く。

 

リード・ラグ・ヒンジ(Lead-Lag Hinge ):全関節式ローターシステムでは、前進側のローターブレードがフラッピングすることにより発生するコリオリの力を逃がすため、ローターブレードを前後方向に動けるようにリード・ラグ・ヒンジを設けている。

 

 

問題の解説

選択肢Aが正解。リード・ラグ・ヒンジは、コリオリの力に対応するために設けられています。
選択肢Bのコーニングとは、遠心力と揚力により回転中の各ローターブレードが上方向に反る現象で、横から回転するローターディスクを見たとき、円錐(コーン)を逆にしたように見えることからきています。選択肢Bは問題のリード・ラグ・ヒンジをフラッピング・ヒンジに置き換えれば正解となります。
選択肢Cの、リード・ラグ・ヒンジの役目は”幾何学的な不均衡を補正するため”というのは誤りです。正しくは、”リード・ラグ・ヒンジが作動した結果、幾何学的な不均衡が生じる”です。

 

まとめ

地上共振は、外部の力がローターシステムに作用して幾何学的な不均衡が発生し振動の原因となりましたが、今回は空力的な不均衡を補正するために、結果としてローターシステムに幾何学的な不均衡が発生しています。空力的に釣り合っているため、これによって振動が発生することはありません。

フラッピング・ヒンジやリード・ラグ・ヒンジが無いと、ローターの付け根に絶えず上下・前後の力が加わり、ローター取り付け部が金属疲労によって破壊してしまいます。

現在のヘリコプターは、ローターシステムに可撓性(ねじっても大丈夫な)素材を使用してヒンジを不要にしたものが主流となっています(Airbus Helicopters AS350など)。
これをリジッドローターシステムといい、構造を簡略化することで、故障の発生を軽減すると同時に地上共振の発生も防止することが出来ます。

また、2枚ブレードのローターシステム(セミ・リジッド・ローターシステム)はティータリング(シーソー)ヒンジを設けることにより、フラッピングに対応しています。構造上、リード・ラグ・ヒンジは不要です。(Bell 206など)

最後に、コリオリの力は、良くフィギュアスケーターのスピン中の動きに例えられます。両手を水平に広げてスピンをしている状態から、選手が両手を上げて頭の上に持っていくと、スピンの速度が増加します。腕の重さが回転軸方向に移動しコリオリの力が働いたため、スピンの回転速度が増加したと説明することが出来ます。

航空気象では、地衡風の説明に地球に作用するコリオリの力が出てきます。調べてみてください。

 

おわり

定速プロペラ:Constant-speed Propeller

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空工学の問題です。

 

例題

86. H928 PVT
A precaution for the operation of an engine equipped with a constant-speed propeller is to
A) avoid high RPM settings with high manifold pressure.
B) avoid high manifold pressure settings with low RPM.
C) always use a rich mixture with high RPM settings.

 

定速プロペラを装備しているエンジンの運用で、注意しなければならないのは次のどれですか?

A)高い吸気管圧力で高いエンジン回転数を避ける
B)低いエンジン回転数で高い吸気管圧力を避ける
C)高いエンジン回転数のときはいつも濃い混合気にする

 

答えは(B)の低いエンジン回転数で高い吸気管圧力を避けるです。

 

その理由を以下に説明します。

 

まず、下の図をご覧ください。

engine_control

engine_control

エンジンコントロールのレバー群です。
一番右の赤いノブがミクスチャー・コントロール・レバー。
左隣の青いノブは、プロペラ・コントロール・レバー。
そしてその左側の黒いノブが、スロットル・コントロール・レバーです。

ミクスチャー・レバーは、ガソリンと空気の混合比をコントロールします。手前にスライドするほど、混合気はリーンに(薄く)なります。

プロペラ・レバーは、ガバナー(調速機)に接続されていて、プロペラのピッチ/エンジンの回転数をコントロールします。Lo側(手前方向)にスライドするほど、プロペラのピッチ(ひねり角度)は大きくなり、その結果エンジンの回転数は低くなります。

スロットル・レバーは、キャブレーター(スロットル・ボディ)のスロットルバルブに接続されていて、奥にスライドするとスロットル・バルブが開き、より多くの混合気(空気)が吸気管に入るため、吸気管圧力は大気圧に近づきます。(吸気管圧力は高くなる)

上図において、各レバーの状態は、ミクスチャー・フルリッチ、プロペラ・フルフォワード、スロットル・アイドルになっています。

 

問題の考え方

turbocharged_engine

turbocharged_engine

選択肢(A)の状態: 高負荷・高回転の状態で、離陸時に最大のパワーが必要な場合の運転です。レバー位置は、スロットル・レバー、プロペラ・レバーともにフルフォワード(奥に押し込んだ状態)の位置。プロペラの抵抗が少なく、スロットルが全開なので、混合気がシリンダー内にどんどん入っていく状態。また、プロペラピッチが浅く、抵抗が少ない状態なのでエンジン回転数・吸気管圧力共に高くなります。

選択肢(B)の状態: 高負荷・低回転の状態で、プロペラのピッチ角度が過大、しかもスロットルバルブが大きく開いた状態の場合です。

自動車に例えると、トップギヤで急坂を登ろうとする場合と同じです。

エンジンに掛かる負荷が大きすぎて、回転数(RPM)を上げることが出来ない、スロットルバルブは開いているので、吸気管圧力は高くなっています。

 

この状態で運転を続けると、エンジンの燃焼室の圧力が上昇することにより、燃焼室の温度が上昇し、デトネーション(異常燃焼)によるノッキングが発生する原因となり、最終的にはエンジンにダメージを与えてしまいます。

したがって、定速プロペラを装備したエンジンでは、低RPM状態で吸気管圧力が高い運転は避ける必要があります。

 

実際に操縦をするときに気を付けなければいけないのは、各レバーの操作順序です。

エンジンの出力を上げるときは、最初にプロペラ・コントロールレバーをフォワード側にスライドしてエンジンの回転数を上げてから、スロットル・レバーをフォワード側にスライドして吸気管圧力を高くします。

逆に、エンジンの出力を下げるときは、最初にスロットル・レバーを手前にスライドして吸気管圧力を下げてから、プロペラ・コントロールレバーを手前にスライドさせてエンジン回転数を減少させるようにします。

 

最後に、選択肢(C)の”高いエンジン回転数のときはいつも濃い混合気セッティングにする”ですが、回転数にかかわらず、適切な混合気セッティングにすることが必要です。

少し濃いめの混合気は、エンジンの冷却を促進するので、安全を考えると、薄すぎるよりはエンジンにやさしいと言えますが、これも程度問題で、濃すぎる状態で運転を続けると、スパークプラグがカブった状態になり、エンジン不調の原因になります。

 

まとめ

固定ピッチプロペラは、エンジン回転数の増減により出力をコントロールしています。離陸時、巡航時ともに同じピッチ角度なので変速機が固定された自動車を運転するのと同じで、効率が良くありません。

定速プロペラは、操縦席からプロペラのピッチをコントロールできるので、離陸時は浅いピッチ、巡航時は深いピッチにして、エンジンのトルクが大きい回転数を維持しながら運用することが出来ます。

また、定速プロペラは一旦セットすると、ガバナーによって、エンジンの負荷に応じ自動的にプロペラピッチをコントロールします。


例えば、水平飛行中に機首を上げ、エンジン負荷が大きくなるとプロペラのピッチを自動的に浅くして、エンジンの回転数が減少するのを防止します。逆に、機首を下げ、エンジン負荷が小さくなるとプロペラのピッチを自動的に深くして、エンジンの回転数が増加するのを防止します。

このようにして、エンジンの一番効率の良い回転数を維持することにより、固定ピッチプロペラ装備機よりも高い性能と良い燃費を実現することが出来ます。

おわり