飛行機の失速速度:The Indicated Airspeed at which a given Airplane Stalls


ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の失速速度に関する問題です。

例題

7.PLT477 PVT

As altitude increases, the indicated airspeed at which a given airplane stalls in a particular configuration will

A) decrease as the true airspeed decreases.
B) decrease as the true airspeed increases.
C) remain the same regardless of altitude.

 

日本語訳

7.  PLT477c PVT

ある飛行機の、所定の形態における失速時の指示対気速度は、高度が増加するにしたがって、

A) 真対気速度が減少するため減少する
B) 真対気速度が増加するため減少する
C) 高度に関係なく一定である

 

解答

C) 高度に関係なく一定である

 

予備知識

所定の形態(Particular Configuration):飛行機のフラップやランディング・ギアおよび機体重量を予め決めた状態にすること。Clean Configurationは、フラップやランディング・ギアを格納して抵抗を一番小さくした状態、またLanding Configurationは、フラップやランディング・ギアを展開した状態をいう。(Dirty Configuration)

 

指示対気速度(Indicated Air-Speed, IAS):ピトー・スタティック式(動・静圧式)速度計において、計器が指示した値を直接読み取った数値のこと。

 

較正対気速度(Calibrated Air-Speed, CAS):指示対気速度から位置誤差および機械誤差を補正した速度。位置誤差は、ピトー氏管自体の取付角度のずれや航空機の姿勢変化による相対風が動圧孔に正対しないことで発生する。機械誤差は、指針と目盛のずれや伝達ギヤの遊び等、機械部分が原因で発生する。

 

真対気速度(True Air-Speed, TAS):較正対気速度を高度と標準以外の温度で補正した速度。同じ指示対気速度で飛行しても、高度が大きくなるほど、温度が高くなるほど真対気速度は大きくなる。静穏な大気中では実際の対地速度と同じになる。

 

 

解説

飛行機は、どのような速度、姿勢においても失速を起こすことが可能です。一般に、航空機の速度が小さくなると失速を起こすように思われますが、速度と失速には直接的な関係はありません。

失速は、主翼の迎え角がある程度以上になると、『必ず』起こります。一般的な翼型においてその角度は16-20°で、この迎え角を『臨界迎え角』と呼んでいます。

問題にある、『所定の形態』とは、飛行機に装備しているフラップやランディング・ギヤが、格納された状態なのか、展開された状態なのかという飛行形態のことで、例えば着陸形態は、フル・フラップ、ギヤ・ダウンした状態を表します。

上記の着陸形態で水平飛行を行い、パワーをアイドル状態にし、高度が下がらないようにエレベーターを引いていくと、航空機の速度計の指示は、どんどん下がっていき、ある指示対気速度(VS0)になると、航空機は失速します。これは、ある速度まで低下したから失速したのではなく、高度を維持しようとエレベーターを引いていった結果、臨界迎え角に達したので失速したということです。

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失速を起こした時の対気速度計指示(VS0)は、海面上でも、海抜6,000フィートにある高地の飛行場でも同じ速度です。その理由は、対気速度計の構造にあります。

対気速度計は、ピトー管の動圧とスタティック・ポートの静圧の対比を指針の動きに変えて速度表示するようになっています。海面上に比べ、海抜6,000フィートでは、気圧が低くなるので、ピトー管に入る圧力も低くなります。しかし、同時にスタティック・ポートの静圧も低くなるため、その割合は周辺気圧に関係なく一定です。

従って、ある一定条件下で失速するときの指示対気速度は、高度に関係なく一定であるといえます。ただし当然ながら、条件を変えれば失速時の対気速度は変化します。

最初に書いたように、飛行機はいかなる速度、姿勢においても失速することが可能です。例えば、100ノットで巡航中でも、エレベーターを急激に引いて、臨界迎え角を故意にオーバーさせれば、飛行機は失速してしまいます。(飛行機の構造部が耐えることが出来れば)また、急旋回中、速度が比較的高いのに失速し、スピンに入ってしまうこともあります。これは、急旋回で荷重倍数が増加し、増加分の揚力を作るためエレベーターを引くと、臨界迎え角に達してしまうためです。

まとめ

失速は、迎え角が一定以上になると必ず起こります。高度が変化しても、ピトー管・静圧孔ベースの速度である指示対気速度は変化しません。