磁針路の求め方:Determine the magnetic heading for a flight

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航法の問題です。

例題

  1.  H987 PVT
    (Refer to figure 22.) Determine the magnetic heading for a flight from Mercer County Regional Airport (area 3) to Minot International (area 1). The wind is from 330° at 25 knots, the true Airspeed is 100 knots, and the magnetic variation is 10° east.

A) 002°
B) 012°
C) 352°

 

Mercer County Regional AirportからMinot Internationalへの磁針路を求めなさい。風は330° から 25 knots、真対気速度は100ノット、偏差は10°Eとする。

 

手順1

図22で出発地と目的地を見つけて、直線を引きます。(下図)

手順2

プロッターを使用してTC(真航路)を求めます。(下図)

true_course

true_course

プロッターを使用して、図のように緯度の線とプロッターの目盛りの合致点を測定しますが、あらかじめおおよその方位を考慮して、メモリを選びます。

この問題の場合、TCはおおよそ北(000)なので、プロッターの目盛り(100,280,010,190)のうち一番近い010(10)を使用します。

TC=012

この地図上のコースを飛行すれば目的地に到着できます。

 

手順3

手順2で求めたTCにWCA(偏流修正角:Wind Correction Angle)を加減してTH(真針路:True Heading)を求めます。

フライトコンピューターを使用して、WCAを求めます。(下図)

W330_25kt

W330_25kt

その1.風向風速をインプットする

フライトコンピューターのTrue Index (▼)に風向330になるようにダイヤルを合わせる。

グロメット(ハトメ)から上方向に風速25ノットの場所(図では125ノット)に鉛筆で点を付ける(ウインド・ドット)
このとき、スライダーを調節して読みやすい位置(図では100ノットのライン)にしておくとマークしやすい。

 

012_100kt

012_100kt

その2.TC・TASをインプットする

フライトコンピューターのTrue Index (▼)にTC(012)をダイヤルを調節して合わせる。

ウインド・ドットにTAS(100)の弧線をスライダーを調節して合わせる。

 

その3.WCAを求める。

ウインド・ドットが中心線から10°左にずれているのを確認する。

WCA=10L(-10°)

 

TC±WCA=TH

012-10=002(TH)

 

手順4

THをMH(Magnetic Heading)に修正する。

磁石の北(磁北)と地図の北(真北)はずれているので、これを修正します。

問題では偏差(Magnetic Variation)は10°E(磁北は真北の10°東側)なので、地図上の真北(000)を飛行するためには、磁石を(350°)に保持する必要があります(‐10°)

TH±VAR=MH

002-10=352(MH)

 

答えはCの352°となります。

 

まとめ

TC±WCA=TH

TH±VAR=MH

これにコンパスの自差(Deviation)を修正してCH(Compass Heading)を求め、飛行します。

MH±DEV=CH

 

WCAを求めるにはフライトコンピューターが便利ですが、風力3角形を作図して求めることもできます(下図)

wind_triangle

wind_triangle

今回の問題では使用しませんでしたが、WCAを求めるときにGS(対地速度:Ground Speed)も一緒に求めることが出来ます。

グロメットに対応するスライダーの目盛りを読むと、80ノットであることが分かります。
目的地までの距離とGSが分かれば所要時間(ETE)が計算でき、出発時間から、到着予定時間(ETA)を求めることもできます。

このようにして飛行することを推測航法(Dead Reckoning)といいます。

 

最後に、このような問題を解く場合は前もって飛行をイメージをすることが大切です。

例えば、
北のコースで、風が北西から吹く場合、流されないようにTCより左向きにクラブを取る。
偏差が東寄りなので、磁針路はマイナス(左向き)にする。
向い風なので、GSはTASよりも小さくなる。
など。

地図上で、VORのコンパスローズを見れば、偏差をイメージすることが出来ます(コンパスローズは磁方位で書かれているため)

 

おわり

 

 

 

ドラッグヒンジの役割:the purpose of the Lead-lag (Drag) hinge

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、ヘリコプター工学の問題です。

 

例題

566. H703 PVT
The purpose of the lead-lag (drag) hinge in a three-bladed, fully articulated helicopter rotor
System is to compensate for
A) Coriolis effect.
B) coning.
C) geometric unbalance.

 

全関節型ローターに装備されているリード・ラグ・ヒンジの役割は何ですかという問題です。

 

fully_articulated_rotor_system

fully_articulated_rotor_system

 

予備知識

全関節型ローターヘッドシステム(Fully Articulated Rotor System):ローターヘッドに対して、ローターが上下(フラッピング)前後(リードラグ)に動くことが出来る関節(ヒンジ)を設けているもので、3ブレード以上のメインローターを持つヘリコプターに採用されているものがある。(ヒューズ269シリーズなど)

 

Advancing (Retreating) Blade :ヘリコプターが前進飛行中、相対風(Relative Wind)を受ける側(風上側)のローターブレードを、前進側のブレード(Advancing Blade)といい、風下側のローターブレードを後退側のブレード(Retreating Blade)という。ヘリコプターを上から見て左回転のローターシステムでは、進行方向右側に位置するローターブレードがAdvancing Bladeとなる。

 

揚力の不均衡(Dis-symmetry of lift ):ヘリコプターが前進飛行中、相対風を受ける側のローターブレード(Advancing Blade)の揚力が、追い風側のブレード(Retreating Blade)の揚力よりも大きくなり、ローターシステム内で揚力の不均衡が起こる。

 

フラッピング(Flapping ):揚力の不均衡により、前進側のブレードの揚力が後退側のブレードよりも大きくなるため、全関節型ローターシステムではフラッピング・ヒンジを設けて、前進側のブレードを上方向に反らせることにより、揚力の垂直成分を減じ、空力的にバランスをとっている。

 

コリオリ効果(Coriolis Effect ):前進側のローターブレードがフラッピングすると、ローターブレードの見た目の重心がローターマスト(回転軸)方向に移動する。このとき同時に前進側ローターブレードの回転速度を増加させようとする力(コリオリの力)が働く。

 

リード・ラグ・ヒンジ(Lead-Lag Hinge ):全関節式ローターシステムでは、前進側のローターブレードがフラッピングすることにより発生するコリオリの力を逃がすため、ローターブレードを前後方向に動けるようにリード・ラグ・ヒンジを設けている。

 

 

問題の解説

選択肢Aが正解。リード・ラグ・ヒンジは、コリオリの力に対応するために設けられています。
選択肢Bのコーニングとは、遠心力と揚力により回転中の各ローターブレードが上方向に反る現象で、横から回転するローターディスクを見たとき、円錐(コーン)を逆にしたように見えることからきています。選択肢Bは問題のリード・ラグ・ヒンジをフラッピング・ヒンジに置き換えれば正解となります。
選択肢Cの、リード・ラグ・ヒンジの役目は”幾何学的な不均衡を補正するため”というのは誤りです。正しくは、”リード・ラグ・ヒンジが作動した結果、幾何学的な不均衡が生じる”です。

 

まとめ

地上共振は、外部の力がローターシステムに作用して幾何学的な不均衡が発生し振動の原因となりましたが、今回は空力的な不均衡を補正するために、結果としてローターシステムに幾何学的な不均衡が発生しています。空力的に釣り合っているため、これによって振動が発生することはありません。

フラッピング・ヒンジやリード・ラグ・ヒンジが無いと、ローターの付け根に絶えず上下・前後の力が加わり、ローター取り付け部が金属疲労によって破壊してしまいます。

現在のヘリコプターは、ローターシステムに可撓性(ねじっても大丈夫な)素材を使用してヒンジを不要にしたものが主流となっています(Airbus Helicopters AS350など)。
これをリジッドローターシステムといい、構造を簡略化することで、故障の発生を軽減すると同時に地上共振の発生も防止することが出来ます。

また、2枚ブレードのローターシステム(セミ・リジッド・ローターシステム)はティータリング(シーソー)ヒンジを設けることにより、フラッピングに対応しています。構造上、リード・ラグ・ヒンジは不要です。(Bell 206など)

最後に、コリオリの力は、良くフィギュアスケーターのスピン中の動きに例えられます。両手を水平に広げてスピンをしている状態から、選手が両手を上げて頭の上に持っていくと、スピンの速度が増加します。腕の重さが回転軸方向に移動しコリオリの力が働いたため、スピンの回転速度が増加したと説明することが出来ます。

航空気象では、地衡風の説明に地球に作用するコリオリの力が出てきます。調べてみてください。

 

おわり

定速プロペラ:Constant-speed Propeller

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空工学の問題です。

 

例題

86. H928 PVT
A precaution for the operation of an engine equipped with a constant-speed propeller is to
A) avoid high RPM settings with high manifold pressure.
B) avoid high manifold pressure settings with low RPM.
C) always use a rich mixture with high RPM settings.

 

定速プロペラを装備しているエンジンの運用で、注意しなければならないのは次のどれですか?

A)高い吸気管圧力で高いエンジン回転数を避ける
B)低いエンジン回転数で高い吸気管圧力を避ける
C)高いエンジン回転数のときはいつも濃い混合気にする

 

答えは(B)の低いエンジン回転数で高い吸気管圧力を避けるです。

 

その理由を以下に説明します。

 

まず、下の図をご覧ください。

engine_control

engine_control

エンジンコントロールのレバー群です。
一番右の赤いノブがミクスチャー・コントロール・レバー。
左隣の青いノブは、プロペラ・コントロール・レバー。
そしてその左側の黒いノブが、スロットル・コントロール・レバーです。

ミクスチャー・レバーは、ガソリンと空気の混合比をコントロールします。手前にスライドするほど、混合気はリーンに(薄く)なります。

プロペラ・レバーは、ガバナー(調速機)に接続されていて、プロペラのピッチ/エンジンの回転数をコントロールします。Lo側(手前方向)にスライドするほど、プロペラのピッチ(ひねり角度)は大きくなり、その結果エンジンの回転数は低くなります。

スロットル・レバーは、キャブレーター(スロットル・ボディ)のスロットルバルブに接続されていて、奥にスライドするとスロットル・バルブが開き、より多くの混合気(空気)が吸気管に入るため、吸気管圧力は大気圧に近づきます。(吸気管圧力は高くなる)

上図において、各レバーの状態は、ミクスチャー・フルリッチ、プロペラ・フルフォワード、スロットル・アイドルになっています。

 

問題の考え方

turbocharged_engine

turbocharged_engine

選択肢(A)の状態: 高負荷・高回転の状態で、離陸時に最大のパワーが必要な場合の運転です。レバー位置は、スロットル・レバー、プロペラ・レバーともにフルフォワード(奥に押し込んだ状態)の位置。プロペラの抵抗が少なく、スロットルが全開なので、混合気がシリンダー内にどんどん入っていく状態。また、プロペラピッチが浅く、抵抗が少ない状態なのでエンジン回転数・吸気管圧力共に高くなります。

選択肢(B)の状態: 高負荷・低回転の状態で、プロペラのピッチ角度が過大、しかもスロットルバルブが大きく開いた状態の場合です。

自動車に例えると、トップギヤで急坂を登ろうとする場合と同じです。

エンジンに掛かる負荷が大きすぎて、回転数(RPM)を上げることが出来ない、スロットルバルブは開いているので、吸気管圧力は高くなっています。

 

この状態で運転を続けると、エンジンの燃焼室の圧力が上昇することにより、燃焼室の温度が上昇し、デトネーション(異常燃焼)によるノッキングが発生する原因となり、最終的にはエンジンにダメージを与えてしまいます。

したがって、定速プロペラを装備したエンジンでは、低RPM状態で吸気管圧力が高い運転は避ける必要があります。

 

実際に操縦をするときに気を付けなければいけないのは、各レバーの操作順序です。

エンジンの出力を上げるときは、最初にプロペラ・コントロールレバーをフォワード側にスライドしてエンジンの回転数を上げてから、スロットル・レバーをフォワード側にスライドして吸気管圧力を高くします。

逆に、エンジンの出力を下げるときは、最初にスロットル・レバーを手前にスライドして吸気管圧力を下げてから、プロペラ・コントロールレバーを手前にスライドさせてエンジン回転数を減少させるようにします。

 

最後に、選択肢(C)の”高いエンジン回転数のときはいつも濃い混合気セッティングにする”ですが、回転数にかかわらず、適切な混合気セッティングにすることが必要です。

少し濃いめの混合気は、エンジンの冷却を促進するので、安全を考えると、薄すぎるよりはエンジンにやさしいと言えますが、これも程度問題で、濃すぎる状態で運転を続けると、スパークプラグがカブった状態になり、エンジン不調の原因になります。

 

まとめ

固定ピッチプロペラは、エンジン回転数の増減により出力をコントロールしています。離陸時、巡航時ともに同じピッチ角度なので変速機が固定された自動車を運転するのと同じで、効率が良くありません。

定速プロペラは、操縦席からプロペラのピッチをコントロールできるので、離陸時は浅いピッチ、巡航時は深いピッチにして、エンジンのトルクが大きい回転数を維持しながら運用することが出来ます。

また、定速プロペラは一旦セットすると、ガバナーによって、エンジンの負荷に応じ自動的にプロペラピッチをコントロールします。


例えば、水平飛行中に機首を上げ、エンジン負荷が大きくなるとプロペラのピッチを自動的に浅くして、エンジンの回転数が減少するのを防止します。逆に、機首を下げ、エンジン負荷が小さくなるとプロペラのピッチを自動的に深くして、エンジンの回転数が増加するのを防止します。

このようにして、エンジンの一番効率の良い回転数を維持することにより、固定ピッチプロペラ装備機よりも高い性能と良い燃費を実現することが出来ます。

おわり

 

 

 

 

乾燥断熱減率:Dry Adiabatic Lapse Rate

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、気象の問題です。

 

例題

367. I25 PVT
What is the approximate base of the cumulus clouds if the surface air temperature at 1,000 feet
MSL is 70 °F and the dewpoint is 48 °F?
A) 4,000 feet MSL.
B) 5,000 feet MSL.
C) 6,000 feet MSL.

 

標高1,000フィートで気温70 °F 露点温度48 °Fの場合、積雲の雲底高度を求めなさい。

 

予備知識

華氏と摂氏の関係(Fahrenheit to Celsius conversion ):[°F]=9/5x[°C]+32

乾燥断熱減率(Dry Adiabatic Lapse rate ):空気中に含まれる水蒸気が飽和していない状態(霧や雨など凝結水分がない状態)では、高度が1,000フィート上昇するごとに温度が5.4°F(3°C)低下する。

露点温度(DewPoint ):水蒸気を含んだ空気を冷却した場合、凝結が始まるときの温度。

露点温度と高度の関係:1,000フィート上昇するごとに1°F露点温度が低下する。

 

 

 

問題の解き方

積雲の雲底高度(AGL)=1,000 x(気温-露点温度)/ (5.4-1)

 

上記の式に問題の数字を当てはめると、5,000ft AGLになるので、MSLに換算するために標高1,000ftをプラスします。

答えは、6,000ft MSL

 

Cumulus

Cumulus

 

解説

対流圏では、高度が上昇すると温度が低下します。その割合を気温逓減率といいますが、空気中に雲、霧など目に見ることが出来る水分がない(飽和していない)場合の減率を「乾燥断熱減率」といい、1,000フィート上昇するごとに5.4°F(3°C)低下します。

問題のように、地表で気温70 °F 露点温度48 °Fの場合、空気中の水蒸気が飽和していないため、霧などの凝結水分は地上で発生しません。もしも気温だけが低下して48 °Fまたはそれ以下になったとしたら、空気中の水蒸気が凝結して目に見える形で外に出てきます。

雲が出来始まる(雲の底)高度は、まさに温度が露点またはそれ以下になった場合です。
ということは、露点温度に達する高度を求めれば、雲底高度を求めることが出来ます。

今、気温と露点温度の差は、70-48=22°Fです。乾燥断熱減率が5.4°F/1,000ftなので、約4,000フィート上昇すれば露点温度の48°Fになると思いませんか?

1,000 x 22/5.4=約 4,074 フィート

それに現在地標高の1,000フィートを加えて約5,000フィートが雲底高度になると思いませんか?

 

でも、正解は6,000フィートなのです。

 

その理由をこれからお話しします。

 

今、地表で気温と露点温度の差は22°Fあります。この状況で気温だけが22°F低下すれば、地表に雲の底が出現します。しかし、実際には地表で温度を下げていき、露点に達するのではなく、「上空で」露点に達するということなのです。

上空は、地表に比べて気圧が低いのはご存知だと思います。
気圧が低いというのは、空気が薄いと考えることが出来ます。
空気が薄ければ、比率は同じでも、水蒸気の密度も小さくなるので、露点温度は地表に比べて低くなります。

1,000フィートにつき 1°F 露点温度が低下すると言われています。

 

そこで、前記の公式を見てください。

積雲の雲底高度(AGL)=1,000 x(気温-露点温度)/ (5.4-1)

CR: 5.4-14.4

 

乾燥断熱減率と高度に対する露点の変化の差を換算した数値(Conversion Rate)=4.4が高度上昇に対する温度低下の割合となります。

 

これで計算すると、

 

積雲の雲底高度(AGL)=1,000 x(70-48)/ (5.4-1)

 

22,000/4.4=5,000ft AGL

これに標高1,000をプラスして 6,000ft MSL

 

ところで、問題には「積雲」の雲底高度となっていますが、どうして積雲にこだわっているか分かりますか?

あと一つ、今回は省略しましたが「湿潤断熱減率」というのもあります。
フェーン現象(Chinook Wind)を説明するときなどに必要ですから、これもぜひ調べておいてください。

 

おわり

 

 

 

 

 

VORのラジアルからETAを求める: What is the estimated time of arrival at…

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航法の問題です。

 

例題

408. H983 PVT
(Refer to figure 24.) While en route on Victor 185, a flight crosses the 248° radial of Allendale VOR at 0953 and then crosses the 216° radial of Allendale VOR at 1000. What is the estimated time of arrival at Savannah VORTAC?
A) 1023.
B) 1028.
C) 1036.

航空路 V-185 を飛行中、0953にAllendale VOR のラジアル248を通過し、1000にはラジアル216を通過した場合、Savannah VORTAC の到着予定時刻は? という問題です。

 

figure24

figure24

上図の赤線はVFR航空路 V-185で、右上の Savannah VORTAC に向かっています。

今、Allendale VOR のラジアル248を09時53分に通過しました。

ラジアルは図の左上にあるAllendale VOR局から放射状に引いた緑線です。
この時のVORの指示は OBS を248 にセットしたら CDI の振れが0でFROMの表示になっているはずです。

7分後の10時00分にもう一度 Allendale VOR のラジアルを調べたら、OBSを216で CDI の振れが0でFROMの表示になりました。

これを地図上に赤と緑の線で記入したのが、上の図です。
赤の線(航空路V-185)とラジアル248の交点が、航空機が09時53分にいた場所です。
同様に、赤の線(航空路V-185)とラジアル216の交点が、航空機が10時00分にいた場所です。

 

この7分間の移動距離を測定すると10NMでした。プロッターがあれば測っても良いのですが、上図は正しい縮尺ではありません。そのような場合、付近の緯度目盛りを使用してください。ひと目盛が1NM(Nautical Mile)です。

同様に、1000の位置から Savannah VORTAC への距離を測ると、40.00NM ありました。

 

7分で10NMを移動する航空機は40NMを何分で移動するでしょうか?

計算しても良いのですが、ここはフライトコンピューターを使いましょう。

 

flight computer

flight computer

 

外尺の10(NM)と内尺の70(7分)を合わせます。そして、外尺の40(NM)に対応する内尺を読みます。

28(分)

 

10時00分にラジアル216を通過した航空機はその28分後、Savannah VORTAC 上空に到着します。

というわけで、答えは (B)の1028です。

 

問題からちょっとそれますが、

この航空機の速度は何ノットでしょうか?

上のコンピューターの図を見るとすぐにわかります。

 

いかがですか?フライトコンピューターはとても便利でしょう?

 

もちろん、フライトコンピューターが無くても計算で求めることが出来ます。が、

フライトコンピューターはパイロット訓練で必要なので、よろしければこちらでお求めください。

フライトコンピューターの詳しい使い方をお知りになりたいかたは、こんなものも販売しています。
併せてご利用ください。

 

おわり

 

オートローテーション降下:Autorotative Descent

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、ヘリコプターの問題です。

例題

620. PLT175 PVT
Which is a precaution to be observed during an autorotative descent?
A) Do not allow the rate of descent to get too low at zero airspeed.
B) Normally, the airspeed is controlled with the collective pitch.
C) Normally, only the cyclic control is used to make turns.

 

 

オートローテーション降下中に気を付けなければいけないことは? という質問です。
答えは、Cの 「通常、オートローテーション中の旋回は、サイクリックコントロールのみで行う」ですが、その理由を以下にお話しします。

autorotation

autorotation

ヘリコプターは、エンジンやテールローターシステムの故障時、コレクティブピッチコントロールをフルダウンの位置にすることにより、メインローターの回転数を維持しながら、グライダーのようにエンジンの出力が無くても安全な降下を行うことが出来ます。

 

オートローテーション降下中は上図右側のように、メインローターを下から上へ流れる空気がローターに揚力と回転力を同時に与えるので、たとえエンジンがストップしていてもローターが停止することなく揚力も失われることがありません。

話は変わりますが、テールローターの主な働きはエンジンがメインローターを回転させるときに発生するトルクを打ち消すことです。
しかしオートローテーション時には、ワンウエイクラッチによりエンジンの出力が切り離されているため、エンジンのトルクを打ち消す必要がありません。
それでも、メインローターとテールローターはトランスミッションを介して繋がっているため、オートローテーション中はテールローターも回転します。

 

オートローテーション中は、機体もメインローターの回転方向と同じ向きに回転する力が働きます。これは、メインローターを支えているベアリングやトランスミッションの抵抗が機体に作用するためです。

 

そのため、オートローテーション中はメインローターの回転方向と逆にペダルを踏み、ヘディングを進行方向に合わせる必要があります。

オートローテーション中は通常、ペダルはヘディングを進行方向に合わせるためだけに使っています。

ヘリコプターはオートローテーション中、旋回するためにペダルを操作すると、相対風が機体の側面に当たるようになり、空気抵抗が増加し対気速度が低下するため、機首が下がります。
どうして、対気速度が低下すると機首が下がるかというと、多くのヘリコプターがピッチ軸の安定性を持たせるために、重心位置をローターマストの少し前方に置いているためです。

 
ヘリコプターの水平安定板の断面を見ると、翼型が逆になっているのをご存知の方も多いでしょう。
前進飛行中は、相対風により水平安定板に下向きの力が加わり、この力が前寄りに設定された重心による機首下げモーメントを打ち消して、ヘリコプターの水平姿勢に保つようになっています。

 

 

対気速度が減少すると、水平安定板を下向きに押す力も減少するので機首が下がるというわけです。

これは、ヘリコプターを「空力的に重い」状態にして、ピッチ軸に安定性を持たすために設計された仕組みですが、オートローテーション時には操縦に悪影響を与えてしまいます。

オートローテーション中に対気速度やピッチが変化すると狙った位置に着陸することが難しくなってしまいます。
したがって、オートローテーション中の旋回は通常、サイクリックコントロールのみを使用します。

 

選択肢Aは、エンジン出力を伴った通常時であれば、Vortex Ring State (セットリング・ウイズ・パワー)を防止するために必要なことです。「対気速度が0に近いときに降下率を大きくしすぎる」と、自身が作り出す下降気流に入ってしまうため揚力を失うことがあります。ただし、オートローテーション中はその心配はありません。

選択肢Bは、「サイクリックピッチコントロールは対気速度を調整するのに使用する」に直せば正解です。

 

最後に、固定翼機では、対気速度をいつも注意して飛行しなければいけないように、回転翼機は、飛行中どのようなときでもローターRPMを100パーセント付近に維持することが大切です。

 

おわり

 

 

 

 

VORの指示:Aircraft’s position from the VORDME

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航法計器の問題です。

 

例題

72. PLT101 PVT
(Refer to figure 26, area 5.) The VOR is tuned to the Dallas/Fort Worth VORDME. The omnibearing selector (OBS) is set on 253°, with a TO indication, and a right course deviation indicator (CDI) deflection. What is the aircraft’s position from the VORDME?

A) East-northeast.
B) North-northeast.
C) West-southwest.

OBSノブを 253°の「TO」にセットした状態で、CDIの針が右に振れているときに航空機の位置を答えなさいという問題です。

 

VOR

OBS 253 TO

左図は、この問題のVOR指示を再現したものです。OBSノブを指で回すと外周の方位ダイヤルが回転します。△印にダイアルが25.3になるように合わせたとき、TO/FROMインジケーターがTOになりました。
このとき、CDIの針は右に振れています。

これは、VOR局へ向かう253度のコースが、航空機の位置に対して右側にあることを意味しています。CDIの振れが大きいほど、コースから逸脱していることを表しています。

 

DFW_VORDME

DFW_VORDME

右図の赤い線は局に対して253°TOのコースです。緑の線は253°FROMのコースとなります。

VORの指示は253°TOのコースに対してCDIが右に振れているので、図の印に航空機が位置することを表します。

従って、航空機は局に対してほぼ東(若干北寄りの)に位置していることが分かります。

 

従って正解は(A)の東北東となります。

このように、VORは自分が設定したコースに対して自機の位置を知ることが出来ます。CDIが真っ直ぐになるようにOBSを調整して、TO/FROMインジケーターがFROMになるようにすると、局からのコース(ラジアル)を求めることが出来ます。
2つ以上のVOR局からそれぞれラジアルを求めると、その交差する点が現在地点になります。

反対に、CDIが真っ直ぐになるようにOBSを調整して、TO/FROMインジケーターがTOになるようにすると、自機は局へのコース上にいることになり、CDIが振れないようにそのコース針路を飛行すれば、局へと飛行することが出来ます。
この場合、局を通過するとTO/FROMインジケーターはFROMに変わります。

いずれの場合でも、VORが指示するのは自分が設定したコースに対する自機の位置です
サークリングを続けるなど、その地点にいる限り飛行機のヘディングを変えてもVORの指示は変わりません。

 

地上共振:Ground Resonance

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、ヘリコプター工学の問題です。

 

例題
91.PLT259 PVT
Ground resonance is most likely to develop when

A) on the ground and harmonic vibrations develop between the main and tail rotors. B) a series of shocks causes the rotor system to become unbalanced.
C) there is a combination of a decrease in the angle of attack on the advancing blade and an increase in the angle of attack on the  retreating blade.

グランドレゾナンス(地上共振)はどのようなときに最も起こりやすいかという質問です。

 

予備知識

全関節型ローターヘッドシステム(Fully Articulated Rotor System):ローターヘッドに対して、ローターが上下(フラッピング)前後(リードラグ)に動くことが出来る関節(ヒンジ)を設けているもので、3ブレード以上のメインローターを持つヘリコプターに採用されているものがある。(ヒューズ269シリーズなど)

 

Advancing (Retreating) Blade :ヘリコプターが前進飛行中、相対風(Relative Wind)を受ける側(風上側)のローターブレードを、前進側のブレード(Advancing Blade)といい、風下側のローターブレードを後退側のブレード(Retreating Blade)という。ヘリコプターを上から見て左回転のローターシステムでは、進行方向右側に位置するローターブレードがAdvancing Bladeとなる。

 

地上共振(Ground Resonance)とは?

地上共振は離着陸時にヘリコプターの降着装置が地面に何回か続けて接触した際に、その衝撃がローターシステムに伝わり、ローターヘッドに対するローターの位置が不均衡になるために振動が発生し、胴体の固有振動数とローターの振動が一致して共振を起こします。

ground resonance

ground resonance

全関節型ローターシステムを装備したヘリコプターは、リード・ラグ・ヒンジ(ローターヘッドに対してローターが前後方向に動くことを許容する関節)が装備されており、外部の力が加わった場合にそれぞれのローターの位置が幾何学的な不均衡となり振動が発生します。
ティータリング式やリジッド式ローターシステムを採用しているヘリコプターでは、リード・ラグ・ヒンジがないので地上共振は起こりません。
また、降着装置に車輪式を採用しているヘリコプターの方が、スキッド式よりも地上共振が発生しやすいとされています。

地上共振が起こると、ヘリコプターは短い時間(数十秒程度)で自己破壊を起こしてしまいます。

パイロットは、地上共振の発生を感じた場合、ローター回転数が高く(通常の運用範囲内・100パーセント前後)離陸が可能な場合は、すぐに浮上して空中にとどまることでリカバリーすることが出来ます。
ローター回転数が低く離陸できない場合は、スロットルを閉じ、コレクティブ・レバーを完全に下げてヘリコプターを完全に接地することにより振動を減衰させることが出来ます。

 

問題の解説

選択肢Aは、”メインローターとテールローター間に共振が発生して”とあるので間違いです。地上共振は、メインローターで発生した振動が胴体と共振して起こります。

選択肢Cの、”前進側のローターブレードの迎角が減少し、後退側のローターブレードの迎角が増加する”は、ヘリコプターが前進飛行中は普通に起こっている現象です。後退翼失速の説明にも使われます。

解答はBの、”連続したショックが原因となって、ローターシステムにアンバランスが生じる”です。

高度計規正値: Kollsman Window, Altimeter Settings

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、高度計規正値(アルティメーター・セッティング)に関する問題です。

 

例題

21. PLT166
If it is necessary to set the altimeter from 29.15 to 29.85, what change occurs?
A) 70-foot increase in density altitude.
B) 70-foot increase in indicated altitude.
C) 700-foot increase in indicated altitude.

 

高度計規正値を29.15から29.85にセットしなおすと、何が変化しますか?という質問です。

 

予備知識

平均海面(MSL, Mean Sea Level):真高度の基準(0ft)となる仮想面。標高は、平均海面からの実際の高さで、xx ft MSL と表示する。

標準大気(Standard Atmospheric Condition):平均海面上において、温度15℃/59°F, 気圧1013.25 hPa/29.92 in Hg

真高度(True Altitude):平均海面からの実際の垂直距離。

指示高度(Indicated Altitude):高度計に、高度計規正値をセットした時、指示される高度。

気圧高度(Pressure Altitude):高度計の規正値を標準値(29.92 inches Hg)に合わせたときに表示される高度。

密度高度(Density Altitude):気圧高度を非標準温度で補正した高度。航空機の性能に影響する。

高度計規正値(Altimeter Settings):飛行場の平均海面上の気圧に相当する数値で、これを高度計にセットすることにより、高度計は、真高度に近い値を指示することが出来る。

高度に対する気圧の変化:1,000ftにつき、約1 inch 低下する。

 

ことわざ

High to Low, Look out BELOW!

高いところから低い所に行くときは、下方に気をつけろ!

 

気圧高度計の仕組み

気圧高度計の内部には、金属製の風船(空盒:アネロイド・ウエハース)が入っていて、風船の中は空気が密封されています。風船の周りは、外気(静圧)が導入されています。

上空に行くに従い、気圧が低下するため、風船は膨らんでいきます。

この風船の、高度上昇に伴うふくらみを、指針に伝えることによって、高度を表示するようになっています。

altimeter

altimeter

ただし、気圧が上下するのは、高度が変化するときばかりではありません。

高気圧の圏内から、低気圧の圏内に飛行するとき、高度計の指示を、たとえば1,000ft一定で飛行すると、実際の高度(真高度)は、どんどん低下していきます。

その理由は、

低気圧に向かって飛行すると、飛行機周辺の気圧が、徐々に低くなります。

気圧高度計は、気圧が下がる→高度を高く表示する。

パイロットは、高度を一定にしようとして、結果的に高度を下げてしまうのです。

 

それが、(気圧が)高い所から低い所に行くときは、下方に注意しろという、先ほどの諺の理由です。

 

また、(温度が)高い所から低い所に行くときも、下方に注意しろという諺が、当てはまります。

 

気圧高度計は、あくまでも気圧のみを感知して作動しているので、温度の変化がそのまま高度計の指示に影響されることはありません。

それではなぜ、温度が高い所から低いところに飛ぶと、高度計が高く指示しようとするのでしょう?

 

考えてみてください。

 

 

問題の解説

高度計規正値は、「現在の場所における平均海面上の気圧」と言うことが出来ます。

もしも、標準大気状態が実際に存在して、平均海面に自分がいるとすると、その時の高度計規正値は、29.92 inches-Hg または 1013.25HPa ということになります。

 

このとき、地面を掘り下げていくと、気圧はどうなると思いますか?

 

高度が高い→気圧が低い ですから、地面を掘り下げると、

高度が低い→気圧が高い となります。

 

ちなみに、平均海面から 1,000ft 掘り下げると、その場所の気圧は、30.92 inches-Hg となります。

 

 

気圧は、高度が1,000ft 上昇するごとに、約 1 inch 低下します。

これは、暗記しておく必要があります。

 

 

ところで、平均海面にいる状態で、高度計規正値を 30.92 inches-Hg にしたら、どうなるでしょう。

 

高度計の指示は、約 1,000ft を指示するはずです。

 

問題では、下の計算の通り、高度計規正値を 0.7 inch 大きくしたので、指示高度は 700 ft 高くなります。

 

29.85-29.15=0.70

0.70x1,000=700 ft

 

残念ながら、気圧高度計で、密度高度は表示することができません。

 

 

 

結論

高度計には、正しい高度計規正値を入れましょう。 飛行中は、最寄りの飛行場のATIS などから新しいデータを更新しましょう。

管制塔などがない飛行場から出発するとき、高度計規正値が得られない場合は、その飛行場の標高を高度計にセットします。(QFE法)

そのとき、高度計のコールスマン・ウインドウに表示される数値は、アルティメーター・セッティングと等しくなります。

 

おわり

 

パイロット訓練 ナビゲーショナル プロッター TAC SEC

201607

ナビゲーショナルプロッター TAC SEC

商品説明: 米国GLEIM社製、NAVIGATIONAL PLOTTERです。

navigational_plotter

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航空図から真航路(TC)および距離(NM/SM)を測定するものです。
2種類の航空図に対応したスケールがプリントされています。

1/250,000 TERMINAL AREA CHART
1/500,000 SECTIONAL CHART

距離のスケールはノーティカル・マイル (海里)とスタチュート・マイル(国際マイル)の両方がプリントされています。

材質は丈夫なLexan(ポリカーボネート)樹脂製。

サイズ:長さ340mm 高さ105mm 60g

付属品:英文解説シート(日本語訳付き)

ターミナル・エリア・チャート目盛り

ターミナル・エリア・チャート目盛り

 

セクショナル・チャート目盛り

セクショナル・チャート目盛り

 

プロトラクター拡大

プロトラクター拡大

 

・頑丈なレキサン(ポリカーボネート)製 ・海里と国際マイルのスケールがSEC・TACそれぞれに印字されています。 ・取扱説明書付き

・頑丈なレキサン(ポリカーボネート)製 ・海里と国際マイルのスケールがSEC・TACそれぞれに印字されています。 ・取扱説明書付き。

 

取扱説明書

取扱説明書抜粋